旅行記 2020 07 てくてく千歳

北海道の玄関ともいうべき存在、新千歳空港を擁する千歳市。ともすれば札幌はじめ道内各地への通過点になりがちなこの街ですが、スルーするのに勿体ない魅力的なスポットが沢山ある街でもあります。そんな千歳市を散策しました。

 

午前3時に自宅を自動車で出発。衣浦トンネルを通って常滑、電車に乗って中部国際空港へ。朝早い時間に発つ便に搭乗します。ラウンジではビールが無限に作れるので、朝7時台から飲酒するダメ人間と化しました。

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朝から

 搭乗したANA701便は、過去の経験と照らし合わせてもトップクラスにガラガラでした。体感ですが、50パーセントほどの搭乗率でしょうか。通路を挟んでで左右に3列ずつあるシートのうち、ほとんどの箇所で1人ないし2人分しか埋まっておらず、完全に空席になっている列も見受けられました。私の座ったシートも隣、そしてそのまた隣とも空席で、その気になれば寝転ぶこともできそうです。怒られると嫌なのでやらないけど。平日の朝早い便であることと、昨今の情勢の影響でしょう。

アナウンスでは、高性能なフィルターを通して機内は常に換気されているので安心してほしいという旨の呼びかけがありました。また、(これにどう効果があるのかあまり分かりませんが)機内サービスの飲み物は緑茶とミネラルウォーターに限定されていました。さらには機内誌も座席ポケットには入っておらず、数か月前とは状況が一変していることを嫌でも実感させられます。航空会社としても、ただでさえ航空需要の激減で大赤字を被っているなか、自社便で万一のことがあれば……と戦々恐々なのかもしれません。

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木曽三川上空

以前旅した、愛知・岐阜・三重の県境地帯を北に向けて飛行します。最初こそ晴れていて地上の様子もはっきりと見て取れましたが、次第に雲が厚くなり終いには全く見られなくなりました。朝はが早かったこともあり、しばらくは睡眠に充てました。

 

10時過ぎ、飛行機はほぼ定刻に新千歳空港に到着しました。さて、今日は札幌市に宿泊することは決めていますが、それまでの予定はこれといってありません。大まかでおぼろげなプランは考えていましたが、基本行き当たりばったりの行動になりそうです。ひとまずラウンジに入って小休止。ラウンジ内のロッカーに荷物を入れたまま外出しても構わないと係員に言われたので、ここにキャリーケースを預けておくことにしました。

 

 

youtu.be

察しのついている方も多いかもしれませんが、千歳市は『ラブライブ!サンシャイン!!小原鞠莉役等で知られる声優・鈴木愛奈さんの出身地であり、PR動画も作成されています。今回の訪問も、紹介されている場所はじめゆかりの地を訪れたいという動機が結構なウェイトを占めています(白状)

 

また、鈴木愛奈さんが出演するアニメ、『邪神ちゃんドロップキック(邪神ちゃんドロップキック')』(以下『邪神ちゃん』)では、千歳市ふるさと納税で寄付を募り、千歳市が舞台となっている『千歳編』が製作されました。Amazonプライムで見られます。

 

https://jashin.welcome-to-chitose.jp/

そしてそれに連動して声優陣のサイン入りパネル、看板、アニメの原画が市内各所に期間限定で設置されています。こんな感じで、千歳市はいまアニメ・声優といったサブカル方面への観光アピールに結構力を入れているようです。実際のところ、TwitterのFF内でも、鈴木愛奈さんや『邪神ちゃん』に関連して千歳市を訪れる人がちらほら見受けられます。

ちなみに『邪神ちゃん』についてなんですが、実は私は『千歳編』しか観ておらず、ストーリーをほとんど把握していないという有様です。なので真剣にカット回収をしようとか、全てのパネルを見ようとか、コラボフードを制覇しようとかそこまでの意気込みはありませんが、「あ~ここアニメで見てたな」くらいの気持ちで臨む、ゆるい聖地巡礼になっています。

 

 新千歳空港からJRで千歳駅へ移動。少々早いですが、まずお昼ご飯にします。

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千歳市錦町4丁目付近の風景

 

向かったのは「太陽の恵み」さん。ここは自身たぶん5回目?の訪問です。鈴木愛奈さんのご家族がやっているお店です。千歳駅からうまく「北栄小学校」もしくは「北斗1丁目」ゆきのバスをつかまえることができればそれを使うのが便利なんですが、あいにく時間が合わなかったので徒歩で向かいました。25分ほどの道のりです。

 

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「太陽の恵み」さん

「太陽の恵み」さんに到着。店の前に車が多く並んでいましたが、平日とあってか今日は特に待ち時間なく案内されました。かつて札幌や旭川でアニメ関連のイベントがあった際には入店まちの行列ができたり、整理券を配って対応したりもしました。見た感じ地元のお客さんがほとんどのようでしたが、ちらほらアニメファンっぽそうなお客さんも見受けられました。

 

 

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絶品の「トロトロオムライス」

ここではほぼ毎回「トロトロオムライス」を注文しています。ふわふわの卵と、デミグラスソース、バターライスの絡み合う味が本当に絶妙で、何度来てもこればっかり食べてしまいます。ボリュームもかなりあるので、ここで昼食と決めている時には朝食は軽めにしています。聞く話によると、「醤油ラーメン」や「ザンギ」も美味しいらしいので、いつか食べてみたいですね。

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「太陽の恵み」さん店内(2019年6月撮影)

店内には主に鈴木愛奈さん出演のアニメ関連ポスターやグッズが展示されています。今回はお客さんも多く店内の写真はあまり撮っていなかったので、写真は前々回訪問した際のものです。実はこの訪問翌日が鈴木愛奈さんのお誕生だったため、ファンからのものであろうお祝いの花が届いていました。

さて、「太陽の恵み」さんですが、実は訪問の少し前にリニューアルをしています。伝聞情報しかないのでアレですが、どうやらこのお店はそのまま営業しつつ、別のお店も開くとかで、その準備でしょうか、メニューや営業時間が変わっています。訪問ご検討されている方はご注意ください。

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ヒグマ出没・注意

食べ終わって「太陽の恵み」さんを後にしますが、またしてもちょうどいいタイミングで運行されているバスの便がなかったため、とりあえず南に向けて歩くことに。この日の千歳の最高気温は約22度で決して暑すぎるということはありませんでしたが、セイコーマートツルハドラッグに寄り道して休憩しながらのんびりと。

 

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すごく広い青葉公園

千歳川にかかる青葉公園橋を渡り、30分ほど歩いて青葉公園に到着しました。ここは丘が丸ごと公園になったような場所で、各種競技場や図書館、神社などが点在しています。鈴木愛奈さんも部活動でここの陸上競技場によく来ていたというエピソードを聞いたことがあったので、そちらまで行ってみようかと思いましたが、案内図を見ると公園はとても広く、結構遠そう… 早朝から動き続けているせいか疲労が溜まっており、またの機会にすることにしました。

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千歳市の図書館

公園の中にある図書館の前から次の目的地へ向かうバスが出ることが分かりましたが、出発まで1時間弱あったので、図書館で適当に過ごしました。地元以外の図書館に行くのってなかなか新鮮な体験ですよね。

 

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サケのふるさと

https://chitose-aq.jp/

図書館から千歳駅を跨いで市街北東へ足を延ばすバスに乗り、千歳水族館に向かいました。「千歳水族館入口」バス停より5分ほど。「サケのふるさと 千歳水族館」です。入館料は大人800円(JAF会員等割引あり)。1500円の年間パスポートもあるので、年に複数回訪れるならば買ってみるのもいいかもしれません。

さて、淡水魚に特化したここの水族館、すぐ横を千歳川が流れており館内から川の中を覗ける窓があります。今日はどんな感じでしょうか。

 

 

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ダメでした。

 

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2019年6月撮影

 

水族館の名誉のために補足ですが、この日こそほとんど魚らしき影は見られず、数分に1匹思い出したかのように窓の前を横切る程度という惨憺たる結果でしたが、昨年に訪問した際には窓いっぱいに魚影が見られました。川の機嫌次第なので、その時どんな風に見えるかは運次第。そこが面白いのかもしれません。ちなみにサケの遡上2020年第1号はつい先日、8/6に確認されたとのこと。

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件の『邪神ちゃん 千歳編』にもここの水族館は登場する関係で、円形の水槽の脇にパネルが展示してありました。

 

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鈴木愛奈さん

 

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水族館の裏手、千歳川にはインディアン水車が設置されています。これはサケを捕獲する伝統的な仕掛けで、昨年は25万匹以上捕獲したとか。千歳川を渡る風がほんとうに気持ちよかったです。

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エンドレス『鈴木愛奈のおいでよ千歳へ!』

帰りのバスまで時間があったので、隣接する道の駅を見て回りました。鈴木愛奈さんのPR動画が無限に流されています。『邪神ちゃん』のコラボフードもこの道の駅で買えるみたいです。

 

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やっと来られたもりもと本店

再びバスに揺られ着いたのはもりもと本店。パンと洋菓子のお店で、道内のスーパーやショッピングセンターなどに出店しているローカルチェーンの本店です。最近知ったのですが、新千歳空港にも店舗があったんですね。今まで名前だけは知っているという状態でしたが、ようやく訪れることができました。「シャモニー」や「雪鶴」はじめ、おやつや翌日の朝食その他もろもろを買い込みます。

 

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真っ白

もりもと本店での買い物を終え、荷物を置いている空港に一度戻ります。例によって疲れからか、1時間ほどラウンジでのんびりしてしまいました。天候が怪しくなってきており、窓の外は霧だがもやだかで視界がだいぶ悪くなっていますが、運航には特に支障は起きていないようです。

 

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ホテルに向かいます。この日の宿泊地は新札幌で、空港からは快速エアポートで乗り換えなしで行けます。悩みましたが、Uシートに課金してしましました。

泊まるのは「ホテルエミシア札幌」。新札幌駅徒歩3分、シティホテルと呼ぶべきような立派な宿です。素泊まりながら、高層階確約シングル利用で1泊6000円とひじょうにリーズナブルなプランがあったのでそれを利用しました(ここからさらにGO TO トラベルキャンペーンが適用されればいくらか戻ってきます)。安くてうれしい反面、ここまでディスカウントしないと客が来ないのであろう現実がチラリと見えてしまい、少々複雑な気分になります。

 

 

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ありがとうございました。

さて、また今日はここでは終わらず、荷物を置いて札幌市外へ足を延ばしました。

地下鉄東西線で西11丁目へ。昨年閉館した、思い出のニトリ文化ホールを見て、世の中の諸行無常を痛感しました。

 

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徒歩で「中央区役所前」まで移動し、市電に乗り反時計回りで「西4丁目」を目指します。いわゆる「乗りつぶし」の一環です。札幌の市電は山手線や名城線と同じく環状運転をしていますが、自身はそのほとんどが未乗であったため、空白を埋めるべく大きく遠回りして2つお隣の電停に向かいます。

夜に札幌都心から郊外へ走る電車なので、乗り込むと車内はそこそこ混んでいてました。しばらく走ると「西線〇条」という電停名が続き、乗客がどんどん減ってゆきます。「西線」は表記上は「にしせん」ですが」、発音すると「にっせん」になるんですね。

都心部から最も離れたエリア、「東屯田通」電停の前後辺りでは、皆降りてしまいついに乗客は私だけになってしましました。開け放たれた窓から吹き込んでくる夜の札幌の空気が心地よかったです。その後電車は再び都心に向けて戻る格好になり、わずかながらの乗客を各電停で拾い、すすきのを通り抜けて「西11丁目」に到着しました。

 

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地下鉄大通駅から南郷18丁目駅へ移動し、やってきたのは「みよしの南郷20丁目店」。「みよしの」は札幌のローカルチェーン店で、一度行ってみたいと前から思っていました。カレーと餃子という、なじみのない身からすると全くピンと来ない組み合わせの「みよしのセット」ですが、食べてみると意外なほどよく合います。新鮮味というよりは、まるでカツとカレーみたいに昔から馴染みのある組み合わせかのような謎の安心感さえ覚えます。餃子は薄皮でジューシー、カレーもしっかりとした味ながら後からピリッとくる辛さで、ひじょうに美味しくいただけました。また食べたい。

 

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「みよしの」近くのセイコーマートで買い込んでホテルに戻ります。私にとってセコマの欠点として、テンションが上がって正常な判断ができなくなりつい買いすぎてしまう点が挙げられます。事実、この量を一晩で消費しきれるはずはなく、ほとんどはカバンに翌朝突っ込む羽目になり荷物になってしまうということを何度も繰り返しており、この晩も例外ではありません。学習能力ゼロなのは自分でもよく分かっているのですが、人間、やめられないものはやめられないのです(開き直り)

 

そうこうしているうちに時刻は0時を回りました。活動時間の長さ故か、疲労もかなりのものになっています。明日も早いです。この晩はぐっすり眠りました。

 

・・・

 

旅行記 2020 06 養老鉄道と樽見鉄道に乗ってみた

岐阜県にある大垣駅。「おくのほそ道」の終点としても知られる水都大垣の玄関です。この駅を発着する中小私鉄が2つあり、2020年6月13日にその両方に乗ってきました。大垣は西に向かう途上に何度も立ち寄ったことのある街ですが、そこから出る私鉄には乗ったことがありませんでした。行こうと思えばいつでも行ける距離だからこそ、案外機会のないものです。乗ったことがないから、乗ってみよう。単純な話です。

 

実際のところの真の目的は、期限の迫った名鉄株主優待乗車証の消費にありました。1枚につき1乗車、任意の駅まで行ける乗車証で、金券ショップなどでもバラ売りされています。訳あって2枚余っていたところにコロナ騒動が直撃し使うに使えず、間もなく紙切れになってしまう瀬戸際だったのです。

東三河に住んでいるので、消費するなら自ずと岐阜方面が有力候補になってきます(遠距離のらないともったいないという精神)。地図を睨みながら行先を検討しているうちに、そういえば大垣あたりの鉄道、結構手つかずで残っているなぁと思い至り、今回の日帰り旅に至った次第です。

 

1、桑名へ 

 

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名鉄の株主乗車証。もう数日で紙切れになるところだった

 

早起きして6:13分発、名鉄の特急岐阜行きに豊橋から乗車。名鉄一宮に向かいます。特別車にしました。これは持論なのですが、名鉄は他の大手私鉄と比べ運賃は高い分、着席が保証された上級席の料金は安い気がします。なのである程度の距離を特急で移動するならば、特別車を使うべき、むしろ使わなきゃ損くらいに思っています。実際のところ休日6時台の特急を始発駅から乗るとなれば、特別料金のいらない一般車でも座席は選び放題座り放題なんですが、なんとなく特別車のほうが気分も上がりますし。どこまで乗っても特別料金は360円です。最近ではネット予約も可能になり、便利になりました。

 

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特別車でのんびりと

 

名鉄一宮からは尾西線津島行きに乗り換え。乗りえ時間が1分しかなく気をもみましたが、対側ホームからの発車だったので難なく間に合いました。津島に向かいます。

豊橋から津島へ行くのならば、通常は名鉄本線須ケ口から分岐する津島線を使うんでしょうが、今回はあえて一宮を経由してみました。大した理由ではないんですが、一宮と津島を結ぶ路線など、三河地方に住んでる身からするとまず使う機会がないので、久々に乗ってみようと思っただけです。

とはいえそう目立った特徴があるわけではありません。住宅地を列車は進みます。部活か課外事業でもあるのか、高校生で車内は意外と混んでます。微睡みつつ揺られているといつの間にか津島に到着していました。

 

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津島に到着

津島は三方面に線路が伸びるターミナル駅ですが、ホームは1面しかありません。ホーム上には人が多く、私の乗り換える弥冨行きにみんな乗るのかと思いきや、先にやってきた津島線の名古屋方面急行、吉良吉田行きに吸い込まれてゆきました。

名鉄では名古屋を終点とする列車はごく少数で、大半の列車は名古屋を跨いで運転されます。尾西線津島線のような支線からの列車も例外ではありません。多くの場合は本線を経由し西尾線に直通します。とはいえ乗客の行先はたいてい名古屋もしくは金山なので、直通先の地域との交流が頻繁にあるかといえば決してそうではありません。尾西線津島線の人は(吉良吉田ってどこだよ…)と、西尾線の人は(佐屋ってどこだよ…)と漠然と思いながら今日も名古屋直通列車に乗るのです。

 

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弥冨駅。名鉄とJRが同じホームに

津島で乗り換えた弥冨行きは案の定ガラガラでした。そのまま終点へ。弥冨駅は名鉄がJRの駅の一部に乗り入れる格好になっており、これは豊橋駅も同じです。改札口もJRのものを使うので、経路について尋ねられたりするのかなと一瞬身構えましたが、改札は無人で拍子抜けしました。件の優待券は改札脇の回収ボックスに入れて、駅舎を出ました。

目指すのは三重県の桑名です。JRでも行けるのですが、すぐ近くにある近鉄弥富駅から近鉄線に乗ったほうが本数も多く便利そうなのでそちらを目指します。一宮あたりから降りつつあった雨がだんだん強くなってきており、すぐ近くだから…と油断して傘なしで向かってみたところあっという間に濡れネズミになってしまい、途中でたまらず折り畳み傘を開きました。

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桑名のアーケード

近鉄の急行列車で木曽三川を渡り、桑名に到着しました。三重県の最も名古屋よりに位置する街で、降りてみるのは初めてです。駅近くにはマンションも多く、名古屋のベッドタウンとしての性格が強いのでしょう。

ここからは、養老鉄道に乗車します。ようやく登場しました、大垣に乗り入れる私鉄のうちの1つです。本数が意外と少なく毎時1本程度しかありません(この旅行に出る前までは、勝手に毎時2本くらいはあるんじゃないかと思っていた)。わりと待ち時間なく発車する便がありましたが、この先の行程を鑑みあまり先を急いでも仕方ないことが分かっていたので、桑名で小休止としました。

手持ちの現金がけっこう少なくなっていたので、まず銀行ATMへ。駅から5分程度。桑名の土地鑑はゼロですが、たぶんこの辺りが飲み屋とか多い雑多なエリアなんだろなと思われるエリアを通り抜けます。休日朝に雨のなか知らない街の誰もいない繁華街を歩くのはなんとも不思議な気分。

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シンプルなモーニング

駅まで戻ったところでまだ時間がありました。朝の特急の中で菓子パンをかじってたとはいえ、少しお腹も空いたので駅前ビルの喫茶店に入りました。コーヒーにおまけでついてくるモーニング。派手さこそないけれど、ジャムとトーストだけのシンプルさが逆に安心感を醸します。店内にはそこそこ客がいるものの、ほとんど地元の常連と見受けられます。店内で流れているNHKラジオが9時の時報を告げ、続いて天気予報を伝えます。今日は全国的に梅雨空で、この先の行程でも晴れ間は期待できなさそう。

 

2、養老鉄道に乗ってみる

 

 

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養老鉄道線の車両

 喫茶店での休憩を終え、きっぷを買って養老鉄道のホームにやってきました。JRと近鉄が同居する桑名駅の中に、窮屈そうに存在します。

これから乗車する養老鉄道は、ここ桑名から大垣を経由して揖斐まで至る路線で、三重と岐阜の県境をダイレクトに越える、唯一の鉄路です。かつては巨大私鉄・近鉄の一部でありましたが、収益が芳しくなく、2007年に別会社として分離されたという経緯があります。

どこかで見たような車両だな、と思いましたが、後から調べたところ、かつて東急電鉄で走っていた車両が使われているようです。東三河を走る豊橋鉄道もそうだけれど、けっこう東急のお古を使っている中小私鉄ってありますよね。3両編成のごく一部のみボックスシートになっている箇所があり、ガラガラだったこともありそこに収まりました。

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大垣駅。右奥に停まっている揖斐行きに乗り換え

列車は揖斐川の右岸を北上します。東には木曽三川の作り出した海抜ゼロメートル地帯が広がるのに対し、西は養老山地の想像以上に急峻な山々が聳えています。ちょうど濃尾平野の西の縁とも言えるような地帯です。

沿線には多度大社や養老の滝といったそこそこ名の知れたスポットが点在しますが、そこに向かうような観光客は見られず、車内はぽつりぽつりと地元客が乗っている程度です。雨模様のせいか、自粛ムードのせいか、はたまたいつもこんな感じなのか…

養老を過ぎたあたりから大垣への流動があるのか、立ち客が出るほどではないものの段々と乗客が増えてきます。桑名を発って1時間強、列車は大垣に到着しました。

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FOR IBI

 

養老鉄道大垣駅頭端式ホームになっており、桑名方面も揖斐方面も同じ方向に発車します。乗ってきた列車はここ大垣が終点なので、乗り換えが必要です。私のような全線乗ってみたいオタクからしたら、桑名→大垣→揖斐とスイッチバックして直通してくれる列車があると嬉しいのですが、そんな需要はほぼないのでしょう。必ず乗り換えを要します。実際、桑名発大垣行きから吐き出された人波は例外なく改札口に向かい、揖斐行きに足を向けるのは私一人でした。接続も考慮されていないのか、発車まで20分ほどの待ち時間があります。

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桑名から揖斐までのきっぷ

今回は普通に乗車券を購入しています。フリーきっぷもあったけれど元を取るほどは乗らないはずなので。桑名から揖斐まで50km強、950円。

大垣を発車した列車は、室駅付近で桑名方面への線路と別れ、再び北を目指します。JR東海道本線東海環状自動車道をくぐり抜けて、神戸町・池田町を走ります。田畑と民家が点在する、典型的な郊外の様相です。乗客は1車両に10人いるかいないか程度。

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揖斐駅に到着

大垣を出て20分と少し、到着した終点の揖斐駅は、こう言っては失礼ですが予想外に立派な駅でした。ちゃんと駅員もおり、改札を行っています。

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雨に濡れる揖斐駅

依然として雨がしとしとと降っています。揖斐駅の外に出てみました。周囲にはこれと言って特に何もありません。ここ揖斐川町の中心部は川を渡ってさらに北に2kmほど行った辺りにあり、どうも中途半端な場所で線路が途切れてしまっているという印象を受けます。

それにしても、養老鉄道として分離される十数年前は、ここまで大阪に拠点を置く近鉄の手が伸びていたという事実に改めて驚かされます。難波や阿倍野橋からここまで、1つの私鉄だけで来れてしまったわけです。近鉄グループ傘下の三重交通グループのさらに傘下の名阪近鉄旅行が駅前に店舗を構えているのが、近鉄時代の名残でしょうか。

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線路はここで途切れる

ここで私はミスをしました。予定ではこの後樽見鉄道に乗車することになっておりました。このまま大垣まで引き返すのも芸がないなと考え、ここ揖斐駅から東方に位置する大野町に向かうバスに乗り、さらに大野町でバスを乗り継いでモレラ岐阜に出るプランを考えていました。

大野町に向かうバスは駅前から列車到着の3分後に発車するはずなのですが、駅前にやってくるのは地元客の送迎のための乗用車ばかりで、バスの影も形も見えません。もしや!と思って貼ってあったバスの時刻表を見たら、そこには「平日のみ運行」の文字が。曜日を取り違えるという、実にバカバカしい単純なミスに、苦笑いするしかありませんでした。

さてどうしたものかと慌てて考えました。タクシーで大野町まで出れば予定するルートに復帰できるかもしれませんが、痛い出費になりそうです。徒歩も一瞬頭によぎりましたが、歩くにはちょっと距離があり、さらにこの雨の中でとなると考えるだけでも憂鬱。

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無念のとんぼ返り

 

結局、芸がないのは承知で、乗ってきた列車で大垣に引き返すことにしました。1~2時間に1本しかない大垣行きが発車する前にミスに気づけたことは、不幸中の幸いでした。元来た道を引き返します。

 

3、樽見鉄道に乗ってみる

 

大垣駅に戻る途上で樽見鉄道の時刻を調べると、こちらも1~2時間に1本しかない列車の発車時刻が迫っていることが分かりました。ちょうど養老鉄道線が大垣に到着して10分弱で樽見鉄道が発車するようです。ちょうど昼時であったので大垣で何か腹ごしらえを…と思っていましたが、お預けになりそうです。

樽見鉄道はJR大垣駅のホームの片隅から発車します。養老鉄道からの乗り換えは理論上十分に可能ですが、かといって余裕はありません。JRの改札に向かう。駅員に樽見鉄道に乗る旨を申告しJRの改札をくぐって、構内の片隅へ。樽見鉄道の窓口がそこにあるので、フリーきっぷを購入、そして乗車。これを最速でこなす必要があり、発車の1分ほど前にようやく乗り込めたというところでしょうか。ちょっとスリルがありました。

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樽見鉄道。景色が後ろに流れてゆく。

例によって地元客がまばらに乗っている感じの車内でしたが、何組かこれから買い物に行くような様子の中高生が見受けられました。沿線に「モレラ岐阜」なる大型の商業施設があり、それに隣接して樽見鉄道モレラ岐阜駅があります。おそらくそこまで乗るのでしょう。

車両のいちばん後方に陣取りました。こういう時鉄道オタク的には最前をとって前面からのパノラマを楽しむのが王道なんでしょうが、最前はなんだか忙しない印象があり、のんびりと乗りたいときは後方がいい気がします。まぁ好みの問題でしょうが。

しばらくJR東海道本線に沿って東に進んでいた線路は揖斐川を渡ったあたりで北に転進し、樽見を目指します。

北方真桑駅の手前で、今は使われていないような築堤が車窓を過りました。2005年に廃止された、名鉄揖斐線の跡です。名鉄もかつては岐阜県美濃地方西部にまで手を広げており、その路線網は近鉄に次いで壮大なものでしたが、いまではだいぶスリムになりました。それにしても、名鉄揖斐線(とそれに接続する各線)の残っていた十数年前までの西濃地方の鉄道網は、かなり賑やかなものだったんじゃないでしょうか。

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織部古田織部織部織部焼織部。(帰途に撮影)

本巣は路線中間の拠点となる駅で、3分ほど停車し運転士の交代が行われました。交代後の運転士はものすごく指差喚呼をハキハキと行う人で、車両後部までその声がはっきりと聞こえます。本巣にはかつてセメント工場があり、樽見鉄道線で貨物輸送を行っていました。この貨物が樽見鉄道としては重要な収入源でしたが、2006年に廃止されてしまい、財政的に苦しい状態にあるようです。

「道の駅織部の里もとす」に隣接する織部駅。ここを境に、樽見鉄道線はまるで人が変わったかのように一変します。ここまでは濃尾平野北端の、平坦な田園地帯を進んできましたが、ここから先は揖斐川の支流、根尾川の渓谷に挑みます。

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水を湛える根尾川(帰途に撮影)

降り続く雨により、根尾川の水量はかなり多くなっているように見えますが、その脇を列車は何事もないかのように軽快に進みます。

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初見では読めない

鍋原と書いて「なべら」はちょっとさすがに想像もつきません。長く呼ばれている間に「は」が脱落したのでしょうか。

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鉄橋とトンネルを多用する

 

神海(旧名:美濃神海)までは、かつて国鉄樽見線として運航していたものを引き継いだ路線です。一方、神海から先は私鉄として再出発した後、1989年になってから開通した比較的新しい区間です。近年になっての建設ということで、鉄橋やトンネルを多用して渓谷をどんどん遡ってゆく、高規格な路線になっています。

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強そう

根尾谷断層のそばを抜けて、列車は終点の樽見駅に到着しました。大垣から1時間強。このやたら存在感を放つ胸像は、樽見線をこの地に誘致するために尽力した宮脇留之助氏のものということです。

さて、ひじょうに悩ましいのが、どの列車で帰るかです。今乗ってきたこの列車は、10分ほどで折り返してしまいます。その次は1時間半以上先。近くの有名なスポットとしては、徒歩20分ほどの場所に有名な淡墨桜がありますが、今の時期は葉桜を通り越して完全に葉っぱでしょう。晴れていたら渓谷ののどかな街で川でも見ながら時間を潰すのも悪くないでしょうが、今日はあいにくの天気。飲食店にでも入れたらいいんですけど、少なくとも駅前には何もなく、歩き回ったところでそういった店がある保証はありません。なので、逡巡した末に、10分後の列車で帰ることにしました。正直、謎の敗北感はあります。本当に鉄道に乗りに来ただけ、THEオタクムーブって感じで本当は避けたい行動なんですけど、まぁやむを得ないですね。

ちなみに本来ならば、列車と接続して無料のバスが出て、うすずみ温泉なる温泉施設に連れて行ってくれます。列車と温泉がセットになったフリーきっぷもあり、樽見についた後の動きはこの温泉に行ってみるのがベターだと思います。しかしこのときはまだ温泉施設の営業自粛が続いており、それは叶いませんでした。

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終点

樽見で線路は途切れますが、国鉄時代のもともとの計画では金沢までつなげる予定だったようです。もし金沢まで開通していたら、東海地方と北陸地方を結ぶ重要な路線になっていたかもしれません。

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折り返す

若干の後ろ髪ひかれる思いを抱きながらも、樽見を後にします。晴れてて温泉もやっているときにまた来たいね。

 

4、帰る

帰途に就きます。まだお昼を回って少し、十分に明るい時間なのですが、早朝から動いているので少々疲れました。目的は一応達成したわけですし、早めに帰りましょう。

 

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大垣駅から出るのに必要なアイテム

 


大垣駅まで戻りました。樽見鉄道を降車する際に、通常のきっぷは回収されます(私が使っていたフリーきっぷはもちろん例外です)。しかし先述のとおり、樽見鉄道の乗り場はJR改札の中に存在するので、このままではきっぷを所持していないことになり、JRの改札から出ることができません。なので降りた客全員に、樽見鉄道社員から降車証明書が配られます。この券ををJRの自動改札に投入すれば、大垣駅から出ることができます。

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視界不良

大垣からJR東海道本線に乗ってやってきたのは岐阜駅。

何とかと何とかは高いところが好きとはよく言ったものですが、旅行中にその街のことをよく知りたいと思ったら、高いところから見下ろすのがベストです。岐阜駅にほど近い岐阜シティ・タワー43では、43階から街を見渡せます。

なんといってもありがたいことに展望フロアが無料なので、もしも岐阜駅で時間ができたら、とりあえず登っておけば間違いないです。今日はこんな天気なので見える景色はご覧のあり様でしたが。

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みんな大好き展望席

忘れてはいけません。今回の旅行の真の目的は、紙くず寸前の名鉄株主優待乗車証を消費すること。なのでわざわざ岐阜駅で降りて、名鉄岐阜駅まで歩いてきました。岐阜から豊橋に向かう名鉄の特急のうち、一部は先頭に展望席が設けられており、これに乗れば優雅に流れる車窓を楽しみながら豊橋まで帰れるという寸法です。展望席は特別車の一部という扱いなので、ここを指定した360円の特別車両券さえあれば乗ることができます。ちなみに個人的にオススメする席は、展望席としては最後尾に位置する5A~Dです。展望に配慮してシートの背もたれが低い前4列とは違い、しっかり頭の後ろまでシートの背もたれがあるので落ち着いて乗っていられるような気がしますね。

走行中、ところどころで雨が強く降る箇所がありました。雨だと展望自体はあまり望めなくなりますが、大雨が打ち付けるなか疾走する展望車は迫力があり、また違った面白さを感じます。

 

大雨に降られながらも、列車は何事もなかったかのように無事豊橋に到着しました。あとは本当に帰るだけです。さすがに疲れがどっと出ました。

 

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今回の行程(地理院地図Vectorをもとに作成)

鉄道の旅、ローカル線の旅は久々で、ホント楽しかったです。今回の旅行自体は、きっぷ消費のための消化試合的な側面が強く、正直自分でも大して期待していなかったところもあったといえばあったんですが、やっぱり行っちゃえば楽しいもんです。

それと同時に、結構よく知っているつもりのこの東海地方でさえもまだまだ見るべきところは無限にあることを実感しました。まだ旅は終わりそうにありません。

 

最後に、あらゆる人が、大手を振って気兼ねなく旅行できる日がまた訪れることを願って。ありがとうございました。

 

謹賀新年

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AZARASHI

あけましておめでとうございます。

日頃、弊ブログをご覧いただいている皆様に、改めまして篤く御礼申し上げます。

 

PCを新しくしました。元をとるためぼちぼちブログを更新したいと思います。目標は昨年の更新頻度を上回ることです。よろしくお願いします。

 

東北の記事が途中で終わってますね。  つづく(大嘘)

陸前高田が旅のピークであったためか、明らかに執筆意欲を失っていますね。実際あのあとほとんど帰るだけだったし。今となってはほとんど覚えていないので、無理に完結させることはしませんが、もし当時更新を楽しみにしていた方がいたら、申し訳なかったですね。

今後、旅行記のような記事を投稿するかもしれませんが、同じ轍を踏まないよう、何とか完結だけはさせる、最悪飽きてもなんかとかして締めるようにしたいと思った次第です。

 

旅行記 2015 10 「東北ジグザグ紀行」 ⑨陸前高田を歩く

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奇跡の一本松付近でひときわ目を引くのが、この斜張橋だ。「希望のかけ橋」と名づけられたこの橋は、人や自動車、列車が通るためのものではない。陸前高田の町の復興に必要な土砂を山から運搬するためのベルトコンベアの一部なのだ。気仙川を跨ぐ部分はこのように立派な造りをしている。

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橋の下を、一本松に向かう通路が通っている。見上げると、なかなかの迫力だ。

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「希望のかけ橋」を越えたベルトコンベアは、旧陸前高田市街の方面へと、長く伸びていた。ただなんとなく陸前高田までやってきた私は、目を見張った。正直な話、今回の旅行でもっとも印象に残る光景だった。なので撮った写真をペタペタといっぱい貼らせてもらった。言ってしまえばただ土砂を運ぶだけの構造物なのだが、これが町の復興を担っている。地元の人々が斜張橋に「希望」を冠したのも、頷ける話だ。

ところでこのベルトコンベア、どうも話に聞くと土砂の運搬が終われば撤去されるため、もしかしたら今はもうないかもしれない。

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気仙沼方面に戻るBRTまでまだ時間があったので、陸前高田駅(BRT)まで歩くことにした。歩き始めて目に付くのが、土砂の山だ。ベルトコンベアで運んだものを、嵩上げ工事に使うのだろうか。

私の使っていたインターネット上の地図サイトではこの周囲の更新があまりされておらず、地図上では陸前高田駅に近い市街地を歩いていることになっていた。しかし、周辺はひたすらに更地である。駅も線路も市街地も見当たらない。町がまるごと消えてしまっているという現実が、にわかには信じられなかった。

下調べが甘かったからか、私はBRTが発着するのは旧大船渡線陸前高田駅の場所だと思っていたのだが、そこは更地だ。ここに発着するのはちょっとあり得ない。慌てて調べ直すと、現在地よりだいぶ北の、丘の上から発着することがわかったので、そちらに向けて歩き出した。

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丘を登る坂道が案外急だったこともあり、奇跡の一本松駅から歩いて50分くらいかけてBRTの陸前高田駅に到着した。旧来の陸前高田駅とは、全く異なる場所だ。付近にはプレハブ造りの市役所やコンビニもあり、ここが現在の町の中心なのだろう。

陸前高田駅が見つからないときにはかなり焦ったが、なんとか予定通りのBRTに乗ることができた。気仙沼に戻る。

 

(つづく)

 

 

旅行記 2015 10 「東北ジグザグ紀行」 ⑧陸前高田へ

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気仙沼には後でまた戻ってくるのでコインロッカーに荷物を入れた。

乗り換えた盛行きBRTは、観光仕様になっていた。写真のように窓に向かって椅子が並べられていたり、車内にパンフレットが並べられていたりする。全ての便がこのような観光仕様なわけではなく、ごく一部みたい。この窓向きシートに座ってみたが、慣れないからか少し酔った。

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(出典:気仙沼線・大船渡線BRT(バス高速輸送システム)>ご利用案内:JR東日本

本来の大船渡線は、気仙沼を出ると内陸を走り、鹿折唐桑上鹿折陸前矢作、竹駒、陸前高田の順に止まる。しかしBRTは鉄道とは異なる海岸沿いの道をゆくため、両者のルートが異なっている。気仙沼陸前高田を直通する便は全て海岸沿い(長部経由)を走行するため、旧来の鉄道ルート上には上鹿折陸前矢作をそれぞれ終点とする支線が延びているような状況だ。どれくらい需要があるかは分からないが、上鹿折から陸前高田方面、もしくは陸前矢作・竹駒から気仙沼方面に向かう乗客にとっては不便だろう。

ちなみに、気仙沼上鹿折はミヤコーバスが運行する路線での一部であり、これをBRTとして扱っている。JRは上鹿折に向かう便に関しては全く運行に関与していないともいえるが、それでもBRTとして指定しているのは、昔からあった上鹿折駅をJRとして見捨てはしないという方針の表れなのだろうか。

BRTは岩手県陸前高田市に入った。車窓から市内を見てみると、海岸に近いエリアは尽く更地になっている。気仙川を渡り、奇跡の一本松駅に着いた。

この奇跡の一本松駅も(当然だが)BRT後に新設された駅である。駅近くには駐車場や飲食店などがあり、奇跡の一本松を見に行く拠点になっている感じだ。しかし、駅の周りには、それ以外何もない。

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工事中のため迂回を余儀なくされ、駅から歩くことおよそ10分、奇跡の一本松に到着した。

数万本あった高田の松原の中で唯一津波に耐えたこの樹は復興のシンボルとされている。ただし、根が海水に浸かってしまったために枯れてしまい、今は中に心棒を入れて立っている状況だ。高いところにある枝葉も精巧につくられたいわばレプリカである。この奇跡の一本松は、木ではなく、人工のモニュメントなのだ。

松の保存には億単位の金額がかかり、それに対して賛否両論が吹き荒れたと聞く。そのような予備知識があったがために、ここまで来たはいいものの素直に「復興のシンボル!すごい!」と感心できない自分がいた。

もっとも、震災とはほぼ無縁に生きてきた私の感想はさておき、被災した人々がこれを見て勇気付けられ、後世の人々が震災・防災について考えるきっかけになれば、こうしてモニュメントとして残した意義は十分にあるだろう。折角(?)立ったのだから、末永く残ってほしい、そんなことを考えた。

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松の根元には、故やなせたかし氏のイラストをもとに作られたモザイクタイルアートが飾られていた。

 

(つづく)

旅行記 2015 10 「東北ジグザグ紀行」 ⑦BRTで、気仙沼へ

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柳津を発車したBRTは、30分ほど走り、南三陸町志津川駅に着いた。

「駅」とは名乗っているが、列車は来ない。事実上バス停である。

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車窓から、旧南三陸町防災対策庁舎が見えた。もうこの辺りより、津波被害の大きかったエリアに入っている。周囲はほとんど更地であった。

志津川を出たバスは、程なくしてベイサイドアリーナ駅に到着した。先ほどの志津川駅は震災前より気仙沼線志津川駅として存在していたのに対し、こちらのベイサイドアリーナ駅は、BRT化後に新設された駅である。

この駅周辺には南三陸町の役場仮庁舎や総合体育館、診療所があり、南三陸町の仮の中心地といった様相だ。高台移転などで震災後に、従来の鉄道駅から町の中心が離れてしまったようなケースにおいては、運行ルートの自由度が高いBRTが有用なのかもしれない。

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BRTは、気仙沼線の路盤を利用した専用道路に入った。トンネルも、旧来のものを活用している。走行したまますれ違えるほどの広さはないので、所々に信号機のついた待避所が設けられている。ここだけ見ると、単線の鉄道のようだ。

専用道なのだから、当然BRT以外はこの道路に侵入することはできない。一般道との境界には遮断機が設置されていて、普段は遮断棹が下りている。BRTの車両が近づいたときのみ開く仕組みだ。

なんとこの日は一般車両が誤進入してきてしまっていた。前方から、対向するBRT車両に続くように、一般車が走ってきたのだ。BRTの運転手に注意され、一般車はバックして最寄の出口から出ていった。これ、一歩間違えれば事故になってたよな。

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先ほどの志津川駅のような比較的主要な駅には待合室があったり駅員がいたりするのだが、そうでない駅は、路上にポールが置いてあるだけ。ますます一般的な路線バスのようだ。

ちなみに、専用道を走る区間は案外短く、それ以外は並行する国道を走行していた。「駅」もその国道上に設けられているものが多い。この日はさほどダイヤに遅れはなかったが、行動を走る以上、どうしてもダイヤの乱れとは切れない関係にある。定時性確保が、BRT導入の上で課題になってくると、どこかで聞いたのを思い出した。

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BRTは、気仙沼の市街に入ってきた。よくある、幹線道路沿いにロードサイド店舗が林立する光景だ。最後は専用道路を走行し、気仙沼の町を西に大きく回り込む形で、終点の気仙沼駅に到着した。

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気仙沼に到着した。ポケモントレインが運行されているからだろうが、駅構内にはポケモンが目立つ。

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気仙沼駅は、本来、前谷地から気仙沼を結ぶ気仙沼線と、一ノ関から気仙沼を経由して盛までを結ぶ大船渡線の接続駅であった。しかし今は、気仙沼線大船渡線盛方面はBRTとなっているため、鉄道とBRTの接続拠点としての性格が強い。かつて線路があった気仙沼駅1・2番線はアスファルトが敷かれ、ここからBRTが発着する。

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時刻表には、「鉄道とBRTは接続するとは言っていない」みたいな旨が記されているが、これは道路状況等による遅れが発生した際の予防線だろう。この日はほとんど遅れはなく、盛方面へも一ノ関方面へも問題なく乗り継げそうだった。

気仙沼にて、大船渡線盛行きのBRTに乗り換える。

 

(つづく)

旅行記 2015 10 「東北ジグザグ紀行」 ⑥柳津へ

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10月4日。鳴子温泉よりおはようございます。

ちょっと早起きして、朝7時台の列車で発つ。

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昨日はもう夜になっていたためよく鳴子温泉駅の駅舎の中を見てはいなかったが、こんな感じの半円形で段々になっている箇所があった。イベントとかを開いたりするのだろうか。日曜日の朝早くということもあって、駅にはほとんど人影がなかった。

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新庄より陸羽東線で東に進み、昨日鳴子温泉に着いたわけだが、今日も引き続き東に進む。東に行けるところまで行って、そのあと再び西の内陸に戻ってくるというのが今日の行程だ。乗り込んだ陸羽東線の小牛田行き列車には、駅舎同様ほとんど人の姿はない。

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1時間ほどで小牛田駅に到着。陸羽東線東北本線、さらに石巻線が接続するターミナルである。宮城県北部は、少々鉄道路線が入り組んでいて、目的地である柳津駅までは、ここ小牛田駅を含めて2回の乗り換えを要する。小牛田で石巻線女川行きに乗り換えるも、15分ほどで前谷地駅に到着。再びここで乗り換え。気仙沼線柳津行きに乗る。朝からせわしない。

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前谷地からおよそ20分、柳津駅に着いた。自治体としては、宮城県登米市に属する。写真は跨線橋からの眺めだ。今日も天気がいい。

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わざわざ鳴子の山の中からここまでやってきたが、柳津自体が目的地ではない。ここからはBRTが出ているため、これに乗る。本来柳津駅は気仙沼線の中間駅であったが、現在鉄道として走っているのは柳津以南のみで、以北はBRTに置き換えられ、鉄道は走っていない。なぜなら、線路や駅が津波で流されてしまったからだ。

駅前には真新しい待合所が設けられていた。先の震災を機に運行されるようになったBRT、話には聞いていたがその実態にかねてから興味があった。幸い、持っている秋の乗り放題パスは、このBRT区間でも有効だ。

気仙沼線・大船渡線BRT(バス高速輸送システム):JR東日本

BRTについての詳しい説明は、上のリンクを見てもらうと分かるだろうが、簡単に言ってしまえば、津波で流された鉄道代わりにバスを使いましょう、ということだ。といっても、一部で鉄道の路盤を利用したバス専用道路を走行するなど、通常のバスとは一線を画す。なお、この旅行の時点では、気仙沼線大船渡線の鉄道としての復旧断念は決定までは至っていなかった。

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モニターが用意されており、BRTの接近情報が表示されている。本来のBRT始発駅は柳津だが、利便性向上のため、2015年6月より石巻線前谷地駅まで運行されるようになった。つまり、現在前谷地・柳津間においては、本来の鉄道(気仙沼線)とBRTの両方が運行されていることになる。

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なかなかBRTが来ないのでちょっと不安になったが、発車時刻直前に駅前広場に入ってきた。鉄道との接続は大体とれている。名古屋のガイドウェイバスのように車体横から案内輪が出ているということもなく、見た目はごく普通のバスだ。

早速乗り込んで、北に向かう。

 

(つづく)