第2回「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」を開催しました 

メンバーひとりひとりが大切にしている、旅行オタクとしての気持ち。

 

大切なライバルで、大切な仲間だから――

もっともっと、知りたくなるんだ。

まだ知らない君を、見つけにいきたい!

 

それぞれが大切に作ってきた行程を交換して旅行をすることを決めたオタクたち。

 

それは、お互いの想いを伝えあうことで――。

 

「ねえ、あなたは誰がどの行程を旅したらいいと思う?」

 

 



 

 

 

お久しぶりです。ごんざれすです。

この煽りでお察しがついたかもしれません。あの企画が帰ってきました。

 

第2回「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」



さる9月23日に、第2回「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」を開催しましたので、その顛末をご紹介します。

 

まず、第2回「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」とは何かという話ですが、旅行オタクが複数人集まって行われる伝統芸能でして、

 

①参加者が日帰り行程を作成する

②作成した行程をシャッフルする

③引いた行程に従って旅程を遂行する

④全員帰着後、参加者間で感想を交換する

という流れで行われます。

 

第1回は昨年のGWに岡山で開催されました。その様子は↓↓↓にリンクを貼っていますので、よろしければどうぞ。

 

 

gonzalez.hatenablog.jp

 

 

 

第2回は、1年4ヶ月振りの開催となります。今回の開催地は関東。前回は出発地と帰着地が同一でしたが、今回は出発地は東京都府中市東京競馬場近辺帰着地は茨城県取手市取手駅と、別々に設定されているのがちょっと変則的です。前回と同じメンバーで、4人で開催されます。

 

行程をシャッフルすることで、はたしてオタクたちはどうなってしまうのか…?

それでは、当日の様子をご覧ください。



1.【是政→新宿】

 

9月23日、6:40。是政駅。ここから行程をスタートします。

 

 

西武多摩川線の終点

今回は、前回の岡山駅のような決まった出発地がないため、出発する駅も行程作成者に委ねられます。他の参加者はJRが発着する府中本町駅に向かう行程が多かったようですが、私は西武多摩川線の終点、ここ是政駅から。

 

時刻は6時台と、決して遅い時間ではなかったですが、すでに自分の他に2人の参加者がスタートを切っていました。特にそのうち1人は4時台の始発に乗せられているらしく、大変そうだなぁ(他人事)と思いましたね。

 

6:45の武蔵境行きに乗車します。西武多摩川線に乗るのは初めてなので新鮮。

是政を発車した列車は、途中駅で乗客を拾いながら武蔵境へ向かいます。

 

府中に西武の車両がいるのはなんか違和感

 

西武多摩川線は、武蔵境と是政を結ぶ、6駅からなる短い路線です。起点と終点の間を普通電車がひたすら往復しています。地域密着型のあまり目立たない存在ながら、新宿線池袋線といった他の西武鉄道の路線とは全く接続されていないという特異な路線でもあります。

 

やはり朝ということで、起点の武蔵境でJR中央線に乗り換えて、都心方面へ向かう需要が大きいようです。途中の白糸台駅で降りると京王線武蔵野台駅へ乗り換えられるようですが、ちょっと歩くみたいですね。

 

ホームに普通のママチャリをそのまま引いてきている乗客がおり、一瞬ビビりましたが、西武多摩川線サイクルトレインとして運転されていて、土日は終日車内に自転車を持ち込めるようです。これは便利そう。

 

武蔵境に到着。行程では5分の乗り換えとなっていましたが、後の行程に差支えが無さそうだったので、1本見送り後続の中央線に乗ります。さすが中央線というべきか、7時頃であってもなかなかの混雑でした。三鷹で青梅特快に追い越されるとのことで、そちらに乗り換えつつ新宿へ向かいます。



2.【新宿→??】

7:27、新宿着。ここで特急列車に乗り換えます。

新宿から出発する特急は数多ありますが、指定された列車は、7:50発の特急「新宿さざなみ1号」館山行きです。

房総半島方面に向かう特急は通常東京駅から出ますが、臨時で新宿を始発駅とする便が設定されることがあります。存在は知っていましたが、実際に乗車するのは初めて。

指定されたのは4号車のグリーン車で、気分も上がります。

 

新宿さざなみ

 

定刻に新宿を発車した「新宿さざなみ」は、まず秋葉原に向け東京都心を横断します。この区間は中央線・総武線を走行しますが、通常は快速列車や普通列車が主に運行されている区間であり、特急列車の、それもグリーン車のシートに身を預けながら車窓を眺めるのはなかなかに珍しい体験です。途中通過する飯田橋御茶ノ水界隈は、学生時代に多くの時間を過ごした場所であり、懐かしさを覚えながら秋葉原着。

 

秋葉原でも乗客を拾い、列車は引き続き東へ向かいます。グリーン車は、窓側はだいたい埋まりつつあるくらいの混雑具合。しとしとと雨が車窓を叩いており、今後の行程に若干の不安を覚えます。隅田川を渡って錦糸町。ここからは、通常の東京発のさざなみ号が走行するルートに合流します。

 

江戸川を渡って千葉県に入る頃から、事前に買っておいたパンを朝食にしながら、今回の行程についておさらいしました。今回の行程は結構やるべきことが多く、この時点では全てを咀嚼し切れていませんでしたので、ここで頭に叩き込みます。

 

船橋津田沼、千葉と停まって、8:46蘇我発。

これまで私は全国津々浦々を回ってきたと自負していますが、実は千葉県の房総半島、蘇我から大網を結んだライン以南には足を踏み入れたことがなく、かねてより行ってみたいと望んでいました。西武多摩川線にしろ、新宿さざなみ号にしろ、初めての体験が今回の行程では多くあり、これを引き当てたのはラッキーだったのかもしれません。

 

さて、この時の私は、未踏の地に向かう高揚感を抱きつつも、その実かなり焦っていました。原因は、降り続くこの雨。雨雲レーダーを開くと、この日の午前については、日本中でもほぼここだけ、神奈川県から千葉県にかけてのエリアで降雨が見込まれる表示となっています。出発した他のメンバーは多くが北の方角へ向っており、投稿される写真を見ると快晴とは行かないまでも雨には降られていないようで、なぜ自分だけ…と思わなくもないですが、そういう催しなんで羨んでも仕方ありません。

 

なぜ雨をそこまで厭うかは、この後の行程に関係します。

与えられた行程はこうでした。

 

 新宿さざなみ号を岩井駅で下車

→20分強徒歩で移動し、道の駅「富楽里とみやま」でレンタサイクルを借りる

→借りた自転車で小浦港へ移動し、そこで「ミッション」を行う

 

そう、自転車での移動が予定されていたので、今後どうすべきか迷っていたわけです。予定されている行程をアレンジしないといけないかもしれません。

 

ここで私の脳内にはいくつかのプランが浮かんでいました。

 

①行程のとおり、レンタサイクルを借りて小浦港へ向う

できることなら可能な限りこの行程に忠実に事を運びたい。しかし、雨が止まない場合は、避けざるを得ないでしょう。徒歩の行程は傘を持っているので何とかなるとして、自転車を借りるとなると話は別です。レインコートのようなものをどこかで調達しなければならないですし、そもそも雨が降っていることを理由にレンタルが中止される可能性も考えられます。仮に借りられたとしても、びしょ濡れで返すのは気が引けます。

 

②タクシーを利用して小浦港を往復する

行程作成者も無策ではないようで、雨天用の行程を注釈に示していました。それによると、岩井駅と小浦港をタクシーで往復するというものでした。

一見良さそうに見えますが、失礼ながらどうも私はこのプランを実行する気があまり起きませんでした。

というのも、私の中に、地方でタクシーはあまり積極的に使いたくないなぁという思いがありました。決して個々のタクシー事業者が悪いわけではありませんが、人口が多くなく、自家用車を利用した移動が優勢な地域では、そもそもの供給の少なさからタクシーを容易に捉まえられないばかりか、仮に営業所へ配車を手配しても断られてしまうケースが多くあります。正直岩井駅にタクシーがどれくらいいるかという状況がはっきりとは分からないので何とも断言しがたいところですが、実際に過去に同様のケースに直面し途方に暮れた経験があるので、この案にはなかなか気が乗りませんでした。

また、仮に小浦港まではタクシーで行けても、往路はどうするかという問題があります。「ミッション」を行うにはそれなりの時間がかかるため、さすがにずっとタクシーを待たせるわけにもいかないでしょうから、後にする際に再度配車の手続きをしないといけない可能性があります。その際に車両が出払っていたら、小浦港で帰りの手段を失うことになります。

 

③歩いて小浦港まで往復する

徒歩で往復。非常にシンプルです。Googleで調べると、小浦港までは2.2km、31分。決して歩けない距離ではありません。

選択肢としてあり得ない訳ではありませんが、往復することを考えるとこちらもどうも気が乗らず…

雨かつそこそこの荷物もある中、田舎道を1時間以上とぼとぼと1人で歩くことを考えると、どうも食指が動かないなぁという思いが先行します。

 

④雨が止むまで待つ

雨雲レーダーは、ちょうど着いてから1時間程が降雨のピークで、それ以降はだんだん雨が上がってくるという予報を示していました。

これを信じるならば、例えば先述の道の駅で雨が止むまで時間を潰し、晴れてから行動を開始するという選択肢も浮かび上がってきます。

ただし、のちの行程に影響を及ぼしてしまうことは必至です。この後も別の場所に移動する予定があり、分刻みのスケジュールではないにしろ、できるだけ影響を後に持ち越したくないので、悩みどころです。

 

こんな感じで暫く逡巡していましたが、果たして…

 

気付けば列車は木更津、君津を後にして浜金谷に差し掛かる頃でした。浜金谷は降りる予定の岩井の10km程手前の駅で、ここを出発するとものの10分程で岩井に着くことになります。そろそろ決断をしなければなりません。

 

止む気配のない雨

 

9:40。浜金谷着。

停まった新宿さざなみ号の車窓から、ホームの様子を伺います。

一見すると殆ど降ってないように錯覚しましたが、水溜りを叩く雨足の強さと、降りた乗客が慌てて屋根のあるところまで駆けてゆくのを見て、行程どおり自転車を使って移動することは厳しいことを悟りました。

そして選んだ選択肢は――。

 

3.【館山】

 

オタクカー(レンタル)発進!!!

 

 

遡ること数十分。浜金谷を発った新宿さざなみ号のデッキからコールしました。

「このあと10時過ぎの特急で着くんですけど、車の空きってありますかね?」

かけた先は館山駅前のレンタカー営業所。直前も直前でしたが、調べてもらったところ、都合よく軽自動車なら空きがあるとのことで、即座に予約を入れました。なお岩井駅にはレンタカーはなく、君津を過ぎたら館山まで店舗がなかったため、一旦行き過ぎるほかありません。

やっぱり自動車の圧倒的な機動力には抗えなかった…ゆるして…ゆるして……急に雨が降ってきたときにも逃げ込めるし…

ちなみに電話したのは「駅レンタカー館山営業所」。特段の理由はないのですが、駅から近く料金が極端に高いこともなさそうなのでここにしました。実際向ってみると、JRグループ運営ということもあり、ほぼ駅直結のような立地でたいへん便利でしたね。

予定外の館山



本来降りる予定だった岩井駅を過ぎ、10:06、新宿さざなみ号は、終点の館山に到着です。

窓口で乗越の精算を行い、先述の営業所で手続きも済ませて、いざ出発。

 

目的地となる小浦港を通り過ぎて館山まで来てしまったので、内房線沿いに戻る格好になります。約13キロのドライブです。

 

4【小浦港】

 

海沿いに北上することおよそ30分。目的地の小浦港に着きました。運転中、折り畳み傘ではちょっと辛そうな雨に降られる場面もあり、この選択は間違っていなかったようです。

 

さて、今まで何度も当然のように「小浦港」と記載していますが、私も初めて聞いた名前でした。南房総市に位置する港ですが、港といっても小規模な漁港なので、ここから旅客船に乗れるということもないですし、観光客が訪れるような市場が開かれているわけでもありません。ごくわずかの地元の方と釣り人が行き交う他には人の気配もしません。こう言っては身も蓋もありませんが、我が国の海沿いにはどこにでもあるような、静かで穏やかな変哲のない漁港という印象です。

釣りをやるわけでもなし、そんな小浦港でいったいどんな「ミッション」が与えられているというのでしょうか……?

 

ミッション① 

ヤングジャンプ№.25(通巻2112号)巻末グラビアの聖地を巡って声優・鈴原希実さんに思いを馳せろ!

✔下記マップの番号が振られている箇所を巡り、鈴原希実さんと同じアングルで写真を撮影&「鈴原希実さん…」の文言とともにツイートする。




 

正気か…?

 

え?

 

……一旦情報を整理しましょう。

まず「ヤングジャンプ」は集英社から発行されている週刊青年漫画雑誌週刊ヤングジャンプのことですね。最近だと『ゴールデンカムイ』が連載していた印象が強いです。

そして鈴原希実(すずはら のぞみ)さん。宮崎県出身の声優さんで、「ラブライブ!スーパースター‼」発のユニット『Liella!』のメンバーで、一般公募のキャストとして2期生・桜小路きな子役に抜擢された方です。ひたむきに頑張る姿がなんともいじらしく可愛らしいキャストさんです。

apollobay.jp

 

 

情報が揃ったことろで、それの№.25(通巻2112号)の巻末グラビアって言われたってそんなん知るわけ……

 

 



あるんだな。これが。

もちろん今回の行程に持ってきているわけではないのですが、普通に買ってましたね。

なぜって?そりゃぁ…私も鈴原希実さんの写真見たかったし…

ともかく、そんなわけでなんとなくの記事の記憶はありました。あの撮影地なんですねここ…てかなんで場所割れてるんですかね……?

 

(実際は、ご丁寧に行程に当該カットやストリートビューなどを交えた解説の別紙が添付されており、ヤンジャン25号を買っていないオタクでも問題なく現地を回れるようになっていました。たまげたなぁ)

 

行程添付の別紙。著作権的にアレかもしれないので一部加工しています。以下同じ

 

てか、撮影スポットを巡るくらいなら別にいいんですよ。「似たようなこと」を私も自主的にやったことがありますし。

 

↓「似たようなこと」の例

 




 

問題は次の文です。

✔鈴原希実さんと同じポーズで写真を撮ってもらい、夜の反省会にて共有する。(可能であれば)

 

うん、無理!

さすがに私にもそれなりに羞恥心はありますし、地元の人からしたら不審者感マシマシニンニクアブラカラメであることは想像に難くありません。通報でもされて警察署の留置場が行程の最終目的地となっては敵いませんので、さすがにこれは勘弁していただく方向で……

 

ミッションとしてはこの小浦港で1つですが、指定されている撮影スポットは4箇所あり、そのすべてを回る必要があります。海側に2箇所。山側に2箇所。

 

海側から攻めます。港の西側に港湾を守るように防波堤が海に向って伸びており、その突端に赤い灯台があります。Googleマップによると、小浦港西防波堤灯台と呼ぶそう。そのまんまですね。

 

まず灯台のある防波堤突端で1枚。さほど歩ける幅の広くない防波堤の途中には2名ほど釣り人が糸を垂らしており一瞬逡巡しましたが、無言なのも怪しいなと思い「こんにちは~」とにこやかに挨拶しながら脇をすり抜けます。

1枚目。赤い灯台

 

幸か不幸か灯台付近には誰もおらず、早速撮影に取り掛かります。できるだけ雑誌掲載のカットに近づけられるよう試行錯誤しながらも、なんとか無事に1枚目の撮影完了。

 

5分ほど前に通った件の釣り人の脇を、再び「こんにちは~」と唱えながらすり抜け、防波堤の付け根付近の、駐車場とも空地ともつかないスペースで2枚目を撮影。雑誌掲載カットの鈴原希実さんの後ろ側に、車止め用として置いてあるであろう切り株が見えていたのがいい目印になりました。

2枚目。なんか広い場所

 

海側の撮影を終え、今度は山側に向かいます。

相変わらず雨が降り続いており、車で向かおうかとも思いましたが、道が狭く止める場所にも苦労しそうだったので徒歩で向かいました。

漁港を囲うように斜面に集落が形成されており、その只中を貫く狭い道を進みます。猫がトコトコと歩いていたり、いかにも漁村の裏道といった雰囲気。

しばらく進むとさらに山側に分け入る道が分かれます。集落のさらに山側の高い位置を国道127号と内房線が通っており、その道は国道と鉄道をアンダーパスで潜っています。

そしてご丁寧に、用意された別紙には、地図と現地の写真とともにその道に進む旨の記載がなされています。ちょっと待て。詳しく書いてくれるのはありがたいけど、さすがに詳しすぎないか???このあたりの理由は後に明らかになります。

 

分け入った道は、これまでの道よりも輪をかけて狭く、トンネルは暗くちょっとおどろおどろしい雰囲気です。道路わきには小さな川が流れ、大雨でも降ったのか、路面にまで堆積物が積もっています。そこに刻まれた轍も濃くはなく、さほど使用されていない道であることが見て取れます。当然、周囲には人の気配が全くありません。こんなところで女性声優のグラビア撮影が行われたとは、にわかには信じがたいのですが……

 

トンネルを出て振り返ると、確かにその場所はありました。3枚目。トンネル坑口で撮影しているカットです。特徴的な警告色のゲート、コンクリートの成分が析出して一部が白く変色したトンネル壁、背後に映ったガードレールと、まさにこの場所で撮影されていました。

 

3枚目。トンネル坑口

 

4枚目の撮影場所も程なくして見つかります。3枚目のトンネル出口からさらに山側に100メートルほど進んだ地点で道は右方向に屈曲します。そのクランク部分にカーブミラーが設置されており、そこで撮られたようです。

 

4枚目。カーブミラー

問題のカットは、カーブミラーのちょうど鏡面のすぐ下から顔を覗かせているようなものでした。撮影後に同じ位置・同じポーズで立ってみると、私の体格では屈まないと鏡面に頭が当たってしまいます。

カーブミラーを通して彼女の小柄さ(事務所HPによると身長152cm)を感じるとともに、同じ場所で同じ体験をすることで、にわかに彼女の実在性を濃く感じられたような気がしました。こういうのが、いわゆる聖地巡礼の醍醐味なのかもしれません。我ながらだいぶ気持ちの悪いことを書いているなという気がしないでもないですが、これは「鈴原希実さんに思いを馳せろ!」とのミッションを忠実に実行した結果なので、私は悪くありません。

 

 

 

時刻は11時半を回っていました。行程どおりの場合は12時にここを発つことになっているので、幾分か巻きで進められています。ただし、最後にレンタカーを館山へ返すという予定外の行動が発生する以上、早めに事を進めたほうがよさそうです。4枚のカットを回収したのち指定されているツイートを投稿し、再び車を走らせ小浦港を後にしました。天気予報どおり、雨はほとんど上がっていました。

 

5鋸南町

 

次の目的地は近くです。小浦港から5キロちょっと、車だと10分ほどで到着してしまいます。行程上は、小浦港に行った足でそのままレンタサイクルで向かうものになっていました。途中トイレ休憩のため行程で寄る予定としていた、道の駅「富楽里とみやま」に一瞬立ち寄りましたが、それでもそれほどの時間は要しませんでした。

目的地は鋸南町岩井駅や小浦港がある南房総市の、北隣に位置する町です。ここでもミッションが設定されており、指示どおり鋸南小学校附近に向け車を走らせます。ここでのミッションとは……

 

ミッション② 

ヤングジャンプ№.25(通巻2112号)巻末グラビアの聖地を巡って声優・鈴原希実さんに思いを馳せろ!

✔下記マップの番号が振られている箇所を巡り、鈴原希実さんと同じアングルで写真を撮影&「鈴原希実さん…」の文言とともにツイートする。

✔鈴原希実さんと同じポーズで写真を撮ってもらい、夜の反省会にて共有する。(可能であれば)

 

さっき見た。

これ、コピペミスではありません。マジでこう書いています。

もちろん場所が異なるので、全く別のカットの撮影です。移動を挟むので別のミッションとしたんでしょうが、実質先ほどの小浦港の延長戦と捉えて良さそうです。

 

今回の別紙

 

さて、ここ鋸南町で回収を指示されているカットは2つ。その2つも僅かに数十メートルほどしか離れていないものなので、かなりイージーに思われました。しかしそれは机上の空論。実際のところ、この日最も神経をすり減らしたのは、このミッションでした。

 

雑誌掲載のカットを再現するためには、気を配るべき点が多々あります。特に撮影する画角については、より正確に再現するためには、ある特定の1点から撮影しなければなりません。例えば建物と山の稜線の重なり具合とからするとこの辺だろう……とか、寄せて撮ると柵の向こうの構造物が映ってしまうのでもっと引きで撮るべきか……みたいにああでもないこうでもないとトライアンドエラーを重ねながら撮るため、どうしても1箇所当たり数分は要します。

実際のところこのミッションを達成したと言い張るためにはそこまで気にする必要はないと思いますが、これはもうオタクの性というか、折角撮るのならばベストを尽くしたいとどうしても思ってしまう質なのでどうしようもありません。実際はこちらはスマホでの撮影なので、機材の都合でどうにもならない差異も多いんですがね。

 

ともかく、先述のとおり1カット撮影するのに数分を要すわけですが、これは小浦港ではほとんど周囲に人がいなかったため、造作もなく行えました。ところが今回の撮影ポイントは、住宅地、それも小学校の真ん前。これは怪しすぎます。

この日は土曜日でしたので小学校の授業はないはずですが、何らかの催しが行われているのか、ちょうど小学校の駐車場から多くの車が出てくるタイミングで、より撮影の困難さに拍車をかけます。

 

(気にしすぎでは……と思う方もいるでしょうが、過去に全く別の旅行先で、ごく普通の風景写真を撮影していたら地元の素行が比較的よろしくない方(婉曲表現)に絡まれすげぇ面倒くさかった経験があるので、どのような場面でも不審に思われる余地を可能な限り減らしたいという思いがありました。)

 

まず初めに、一般通過オタクの顔つきをして撮影地を見てみます。ここで大体の撮影位置を確認。目視で画角についても検討します。その後でできるだけ手短に撮影を敢行しミッション完了という2段構え(?)で行くことにしました。

1枚目は小学校の外周歩道。ここは柵越しに小学校の校庭方向に向けてシャッターを切るため、撮りづらさMAXです。

2枚目はその近くの十字路。路端にカーブミラーが設置されておりそこでの撮影です。1枚目ほどではありませんが、周囲が住宅地なのでやはりこちらも撮りづらいです。

 

2枚目までロケハンし、ちょうど周囲に人がいないタイミングだったので先に2枚目のスポットから撮影をします。できるだけ手短に、何枚か撮って退散。

 

先に2枚目。カーブミラー(2)

1枚目の撮影地に戻りますが、ここで道の向こうから地元のおじいちゃんが歩いて来るのを認めたので一旦撮影を保留。タイミングをずらして何とか撮影し、無事ミッション完了です。慌ただしかったので、思いを馳せる余裕はなかったですが。

1枚目。小学校の外周

 

というかどうしてこの場所が撮影地に選ばれたんでしょうね?小浦港はまだ海の景色が撮れるので分からなくもないですが、こちらは本当にごくごく普通の住宅地。どうやって場所を選んでいるのか、気になるところです。

あとどちらの箇所でもカーブミラーの下でポーズをとっているカットがあるんですよね。なんでだろう……小柄さが際立ってオタク受けがいいからかな……

 

 



さて、だいぶ女性声優撮影スポット巡りに文字数を割いてしまいましたね……

ここまで5000字超にわたるオタクの徘徊奇行文を読ませてしまって、申し訳ないです。お付き合いくださりありがとうございます。旅行記っぽい記載に戻りますので、どうかご勘弁を。

 

時刻は12時半。そろそろお昼ご飯です。行程では昼食場所は指定されていませんが、いくつか候補が挙がっていました。

その中の1つ、惣四郎」という寿司店に向ってみましょう。行程に「昼過ぎだと終了している可能性大」という注釈がされているのが気がかりですが……

 

お店は今いる鋸南小学校附近からかなり近く、駐車場が分からず入店に少し手こずりましたながらも、ものの数分で到着しました。終了の可能性大との事前情報があったので、ダメもとの気持ちで訪れましたが、今日はまだ大丈夫とのことで、ほっと一安心。

 

店内はカウンターが4席ほどあるほかに、小上がりが2卓用意されています。カウンターに収まって、注文したのは「地魚にぎりAセット(1050円)」。店内外に掲示があり、ネット上の口コミでもかなり推されていることから、多分人気メニューなのでしょう。地魚の寿司8貫と鯵の味噌汁、手作りデザートがセットになっています。200円高い上位互換のBセットには、上記に加えてなめこそばがついてくるようです。

 

美味すぎた

 

10分ほど待ってAセットが運ばれてきます。8貫の寿司はいずれも見た目は似ていますが、実は全て違う種類の魚。こだわりを感じます。おなじみの魚からあまり耳なじみのない魚まで、様々な味と食感を比べながら楽しめて、とても良かったです。美味。

「サワラ」と「ワラサ」が同時にきてはじめは「え?」と思いました。というか「ワラサ」ってはじめて聞いた魚なんですが、東日本において60〜80cm程度のブリをそう呼ぶとのこと。出世魚であるブリの数ある呼び名の一つみたいですね。

味噌汁とデザートと解説つき

 

セットの鯵の味噌汁は、炙った鯵がまるまる1尾入っており豪快。香ばしくてこちらも美味しかったです。最後には自家製のデザート。キウイのチョコレートの寒天で、いきなり洋風?なメニューでびっくりしましたが、優しくて食後にはありがたい味わいでした。

 

大満足で店を後にします。リーズナブルながら料理もたいへん美味しく、そりゃ遅い時間には売り切れちゃうのも必至だわと納得しました。また南房総方面へ行く機会があればぜひ訪れたいお店です。いいお店を教えてもらいました。



6鋸南→館山→浜金谷】

 

そろそろ館山に戻らなければなりません。ここ鋸南から館山は車で30分ほどです。この先乗る列車の時間から逆算して行動します。

 

国道127号を南下します。途中時間があったので那古船形駅に寄り道したり、レンタカーに給油したりしながら、再び館山駅に戻りました。ここで無事レンタカーを返却。

 

 

 

さらに時間があったので、駅の東西を見て回ります。

 

館山駅西口から海岸方面を望む

レンタカーの営業所があった西口は北条海岸にほど近く、明るく開けた雰囲気です。白壁に橙色の屋根の南欧風の駅舎に合わせて、周囲の建物の一部も意匠を揃えており、海岸に続くヤシの木と相俟って、リゾート気分を演出しています。第一印象では志摩スペイン村みたいだぁと思ったものですが、元ネタが同じならばそれも当然ですね。

 

こちらは東口

一方逆側の東口。こちらは市街地に近い側であり、地元の人が普段使いするのはこちら側なのでしょう。駅前には学習塾や居酒屋が居を構え、典型的な地方都市の駅前という様相を呈しています。

ちょうど東口から、アクアラインを経由して東京方面に向けて高速バスが出発してゆきました。館山駅は個人的には房総半島の特急列車の終着駅という印象が強かったですが、今ではその需要の多くは高速バスに取って代わられたようで、現在館山駅発着の特急列車といえば、今朝乗った新宿さざなみ号が時々臨時で設定されるのみです。諸行無常を感じますね。

1本だけの「本日の特急」



再び駅に戻ってきっぷの手続きをします。直後に乗る区間交通系ICで乗るのですが、行程作成者によって用意された、さらに後に使うきっぷの区間に一部誤りがあり、変更の手続きが必要でした。

近年全国的に出札窓口(みどりの窓口)が大幅に縮小される傾向にあり、館山駅もその例外ではありません。代わりに数を増やしているのが「話せる券売機」と呼ばれる、オペレーターと通話しながら券売機を通して各種手続きができる券売機でした。自身は使うのは初めてで、「オペレーターにつながるまで数十分待たされる」なんて噂も聞いたことがあるのでホントにこれでできるのか???とやや疑心暗鬼のまま操作しましたが、すぐに繋がったし操作も全部案内されるので分かりやすく、すんなり手続きが完了したので拍子抜けたくらいです。オペレーターとちゃんと繋がりさえすれば、便利に使えそうです。

 

14:42。内房線の木更津行き普通列車館山駅を後にします。4両編成の列車はちらほらと立ち客が出るほどの混雑です。

那古船形、富浦と内房線を北上します。今日はこのあたりを北に南に何度も往復していますね。レンタカーを選択したことが原因なんですけど。

件の小浦港のそばを通過するのを見届けたのを最後に、意識が途絶えました。レンタカーというズルはしたものの、それでも6時台から動き続けているわけで、無理もないでしょう。

 

はっと気づいた瞬間にはちょうど降りる駅に着いて扉を開いたところであり、あわてて下車します。15:08。浜金谷着。

 

7【浜金谷→久里浜

浜金谷では意外と多くの乗客が下車していました。近くの金谷港から東京湾フェリーが出るので、それに乗り換えるのかもしれません。私もその1人です。

ここの乗り換えはかなりタイトで、乗ろうと目論んでいる便は15:20に出港します。猶予は12分。Googleマップでは駅から港までは徒歩7分と表示されるので、理論上不可能ではありませんが、かなり急がなければなりません。

 

東京湾フェリーは、千葉県は房総半島の金谷港と神奈川県は三浦半島久里浜港を40分で結ぶ航路です。時期によって運航本数が変動しますが、この日は本数の多いAダイヤの適用日で、おおよそ毎時1本運航されていました。

館山から北上する国道沿いには、年季の入った東京湾フェリーの広告看板がいくつか立てられており、渋滞なしで都心方面に帰れる利便性をアピールしていました。かつてはそうした利用で賑わったようですが、東京湾アクアラインの開通で大打撃を受けてしまったようです。こちらも諸行無常ですね。

この航路は乗っておきたいとぼんやり思っていた航路なので、こういう形で機会を得られて良かったです。

浜金谷駅からダッシュ

 

駅の写真を軽く撮るなどしながら足早に港を目指します。問題は、15:20の便に乗るためにどれくらい前に港に着いている必要があるか分からない点です。長距離フェリーなどでは、徒歩乗船でも出航の30分前には港に着いているよう案内がされることがあります。さすがにこの短距離航路で30分前ということはないと思いますが、それでも5分前あたりで締め切る可能性はあり得ます。1分でも早く港に着くに越したことはありません。

 

港周辺は観光客向けの飲食店が軒を連ね、フェリーターミナルも土産物コーナーを通り抜けて乗り場に向かうかのような構造でした。しかし時間がないのでいずれも素通りするほかありません。券売機で素早く乗船券を購入し、2階にある乗り場へ急ぎます。この時点で15:15。出航5分前の微妙な時刻ですが、改札係に切符を提示すると、止められることもなく停泊中のフェリーに案内されました。

 

乗り込んだ船は「しらはま丸」。船内は複数の階層があり意外と大きいです。乗客はそれなりにいますが、それを上回るだけの座席が用意されており、直前の乗船でも難なく席の確保はできました。荷物を置いて、甲板に出てみます。

 

しらはま丸から望む金谷港と鋸山

 

甲板に出るころにはすでに出航の準備がほぼ整っており、まさにしらはま丸が動き出そうとしている最中でした。後方を見ると、金谷港の向こう側に、壁のように屹立する山容が目につきます。富津市と鋸南町の間に聳える鋸山です。

鋸山は標高は300メートル台と決して高い山ではありませんが、海のすぐ傍にまさしくノコギリの歯のような荒々しい山体が立ち塞がっている様子を目の当たりにすると、高さ以上の迫力を感じます。港のすぐ向こうに高い崖がそそり立つ光景は、どこかの離島の出港シーンのような雰囲気があります。

 

船内に戻ります。この船には売店があり、土産物のみにとどまらず唐揚げやポテトなどのホットスナックも取り扱っています。

せっかくなので利用してみることにしました。どうせなら他ではなかなかお目にかかれないものがいいなと思い、よこすか海軍カレーパンいわしバーグを購入し、おやつにしました。

カレーパンといわしバーグ



 

船室から前方をに目をやると、もう目的地の久里浜港が間近に見えます。

偶然にもこの旅行の前週に、太平洋フェリーの名古屋から苫小牧に至る航路に乗船していました。その時の所要時間はおよそ40時間。それと比べると、東京湾フェリーの40分は刹那と言っても良いほど短く感じます。正直もっと乗っていたいくらいです。

(そんなオタクのために、同じ船ですぐさま折り返すだけのチケットも発売されているみたいです。)

 

船の前方を、伊豆諸島からやってきた東海汽船の船が横切ります。東京湾フェリーの航路は、東京湾と外海を繋ぐ航路に直交するような形となっており、目を凝らすと他にも数多の船が横切るように航行しているのが見て取れます。操舵に気を使いそうな航路ですね。

 

東海汽船

 

自販機で飲み物を買おうと船内をうろうろしていると、下層のデッキにばかデカイゴルフバック置き場が用意されているのを見つけました。この日は数えるほどしか置かれてはいなかったですが、シーズンや時間帯によっては、ここに満載するほどに房総方面に向かうゴルファーの乗船があるのでしょうか。

 

ゴルフバック置き場が無限に

 

そうこうしている間にも久里浜港はどんどん近くなり、ほぼ16時ちょうどに着岸しました。降りる際にチケットを渡さなければならず、一瞬どこにしまったかと探してしまいましたが、ポケットに入っていたのがすぐに見つかり事なきを得ました。

 

8久里浜→逗子→葉山→逗子】

 

房総半島から三浦半島へ渡ってきました。日は西に傾きつつあります。

 

乗ってきたしらはま丸

久里浜港から駅までは徒歩だと30分弱かかるようですが、港から連絡するようにバスが出ているのでこちらを利用します。

バス乗り場の傍には折り返しのフェリーで金谷港へ航送する自動車が列をなしていました。航送料金は普通車で4400円と決して安い額では無いように思えますが、久里浜・金谷間は陸路で向うとなるとアクアライン経由でも110キロを要すので、うまく使えば短縮効果は大きいのかもしれません。

接続する京急バスに乗って、10分ほどで京急久里浜駅に到着します。が、ここから京急線には乗り換えず、行程ではJRの久里浜駅から乗るように指示されているのでそちらのほうに向かいます。

JRの久里浜駅横須賀線の終点駅で、京急久里浜駅の裏手に位置します。そんなに離れているわけではありませんが、バスを降りた京急の駅前と比べると物静かな雰囲気。

JRの久里浜駅

16:42発の千葉行きに乗車します。

ホームの横には留置線が広がっています。眺めていると、停まっている横須賀線の車両を撮影するために線路内に立っている鉄道ファンがおり、え?これヤバいやつなんじゃ?と一瞬身構えしましたが、よく見たら近くにJRの係員も控えていました。最近よく聞く、公式の撮影会が開かれていたみたいです。

 

(おそらく↓これ↓)

www.tetsudo.com

 

久里浜から乗って、この後は逗子で下車します。乗車時間は20分ほどしかありませんが、行程ではグリーン車へ乗車するよう指示されています。実は今回の行程、朝の西武多摩川線と中央線、それから昼過ぎの内房線以外の鉄道移動は全てグリーン車を利用することになっており、そのためのきっぷor料金も用意されています。自分ではまずこんな豪遊はしないので、さすがにたまげました。とはいえせっかく料金が用意されているので、ありがたく乗車します。

 

グリーン車

 

久里浜を発車した列車は、三浦半島の山間をトンネルも用いつつ北上。半島東側の海岸に出たら横須賀です。車窓からは護衛艦の姿も見えます。横須賀を出ると進路を西に転じ、半島を横断します。西側の海岸線に近づくと、下車予定の逗子に到着です。

 

逗子駅からは再びバスに乗車し、葉山方面を目指します。逗子駅前には多くの人やバスが行き交って入り、つい2~3時間前までは南房総ののどかな海岸線にいた私には大都会のように映りました。

 

ここでちょっとしたミスをします。

逗子駅での乗り換え時間は10分あったのですが、トイレにいっていたり何だったりで、行程で指示されたバスを逃してしまいました。これは問題ありません。毎時4~5本ほどバスは出ており、行程にも「適当に乗車」と記載されています。

指示されていたバスは「葉山」行きでした。バス乗り場で待っていると、「長井」と別の行き先を示したバスがやってきます。経由地の表示を見たら「葉山」の記載があったため、なんだ、これに乗ったら早く着きそうじゃん~と深く考え乗り込んでしまいます。

これが間違いでした。後から知ったのですが、逗子から葉山まで向かうバスは、県道207号経由で海岸沿いに向うものと、国道134号経由で内陸を通って向うものがありました。「葉山」へ向うのであればどちらでも良かったのですが、行程では海岸沿いに走る前者の途中にあるバス停に向かうということになっています。私が乗り込んだのは後者のルートであったため、明後日の方向に向ってしまっていたのです。

 

京急の逗子・葉山駅を出たころ、車内のモニターで経由地を見ていた私はここで初めて違和感を覚えます。たしかに葉山経由するよな……?でもなんか思っているのと違うバス停が表示されているけど……?

もしやと思い経由バス停と地図を照らし合わせて確認したところ、これ違う経路か???と思いあたり、急いで押釦を押します。

バスは「桜山七丁目」に停車。慌てて下車します。幸いだったのが、このバス停が海岸沿い経由と内陸経由が分岐する直後のバス停だったこと。ここから徒歩5分ほどで、海岸沿い経由のバス停に向うことができるようです。1つ先まで行ってしまっていたら、桜山隧道を潜ってかなり内陸まで運ばれてしまうところでした。

 

徒歩で「六代御前まえ」バス停へ移動し、ここから乗車。行程記載の便からはいくぶんか遅れてしまいましたが、無事に本来のルートに復帰しました。

さすが葉山へ向うバスと言うべきか、日没迫る時刻にもかかわらず、地元客に混じって観光客風の乗客も多く、そこそこの乗車率でした。県道はところどころ幅員が狭いところもありましたが、運転手の技術と経験の賜物か、何事もないように対向車と離合していました。

 

10分ほど乗車して、17:53、「真名瀬」バス停で降ります。ここでは、最後のミッションが用意されています。

 

夕刻の真名瀬海岸

 

ミッション③ 

ヤングジャンプ№.10(通巻2098号)巻末グラビアの聖地を巡って声優・鈴原希実さんに思いを馳せろ!

✔下記マップの番号が振られている箇所を巡り、鈴原希実さんと同じアングルで写真を撮影&「鈴原希実さん…」の文言とともにツイートする。

✔鈴原希実さんと同じポーズで写真を撮ってもらい、夜の反省会にて共有する。(可能であれば)

 

知ってた。

ここまで徹底していると、いっそ清々しさを感じますね。

ヤングジャンプ№.10(通巻2098号)」は買っていないのでこの場所に心当たりはなかったですが、例によってご丁寧に詳細なガイドが用意されているので撮影できてしまいます。

 

降りた「真名瀬」バス停は、真名瀬海岸の小さな砂浜に隣接して設けられていて、降りた瞬間に海の景色が飛び込んできます。先程のミスで時間を食ったこともあり、すでに夜の帳がほぼ下り切りつつある時刻ですが、うっすらとした明かりの中に浮かぶ海岸の風景はなかなか風情がありました。遠くには鎌倉・江の島方面の町明かりも見えます。晴れた昼間には相模湾越しに富士山も望めるようです。

 

最後の別紙

 

今回の撮影スポットはバスを降りてすぐ、というかバス停そのものであったので、移動には全く困難がありませんでした。

逗子方面に向かうバス停には白く塗られたコンクリート製の待合所が備えられており、ここが最後の撮影スポットです。カットとしては3つありますが、いずれも数メートルの範囲で撮られているものでした。

1枚目。バス停待合所

2枚目。標高約3.8m

3枚目。海岸へ降りる階段

私にとって幸運だったのが、この真名瀬海岸自体が風光明媚な場所であるのに加え、当該バス停も写真映えスポットとして認知されつつあるため、撮影をしていてもさほど不審感が出なかった点です。苦労した鋸南とは対照的ですね。

 

miurahantou.jp

 

私が滞在している最中にも、ツーリング中と思しき兄ちゃんがやってきて愛車とバス停を合わせた写真を撮っているような場面もありました。バス停であるので、発車時刻近くになるとバス待ちの乗客がやってきます。その時だけは写りこんでしまわないよう気を使いつつ、3つのカットを回収。光量が足りなくてどうしてもブレてしまいますがまぁ御愛嬌でしょう。

 

 

 

ミッションが終わったので逗子へ引き返すべくバスを待ちます。ただ、私の中にはどうしても心残りがありました。

 

✔鈴原希実さんと同じポーズで写真を撮ってもらい、夜の反省会にて共有する。(可能であれば)

 

思い返すのはこの指示。振り返ると今回の旅行は勝手にレンタカーを使ったりと行程の指示を破りがちです。無論仕方のない部分もありますが、こういったことがまかり通るのは企画の趣旨の観点から問題でしょう。禊をしないといけません。

 

ということでやりました。自撮り。

周囲に撮ってくれるような人はいなかったので、バス停待合室内にあった出っ張りのようなところにスマホを設置しての撮影です。一般的にオタクは自撮りをしないと言われて久しいですが、私も御多分に漏れずマジでする機会がないままここまで来てしまったので、セッティングにはだいぶ苦労をしました。そんなわけで撮れた写真は画角もめちゃくちゃでとても見られたものではありませんてしたが、これで許していただきたいところです。

問題の写真。オタクキモすぎ罪で捕まるかもしれないので一部加工しています。

 

例によって観光客を満載したバスに揺られ、真名瀬海岸を後にします。また明るい時間に改めて訪問してみたいですね。

若干の渋滞に巻き込まれながら、18:40頃、逗子駅に到着です。

 

行程どおりであれば18:23着であったので、およそバス1本分遅れています。往路のバス乗り間違いが響いた格好です。

しかし問題はありません。行程に遅れが生じても良いよう、この2回目の逗子駅で約100分のバッファが設けられており、この間に夕食もとれるようになっています。次に乗る列車は20時過ぎなので、だいぶ余裕があります。

 

逗子駅周辺には飲食店も多くあり、夕食には困らなそうです。昼飯を寿司と豪勢にキメているので、ここは適当なもので良いかなと妥協し、悩んだ結果神奈川県の郷土食を固め濃いめ多めで食すなどしました。

 

 

 

(行程では一案として葉山町内の海鮮が楽しめる飲食店に行くプランも挙げていましたが、午前までに予約が必要なお店であったため、その時点ではこの先の行程がうまくいく保証もなく、予約してしまうのもリスキーと思い断念したのでした。)

 

9【逗子→取手】



逗子発20:09の千葉行きで離脱します。もうここからはゴールに向けて一直線。次に改札を出るのは取手駅です。

グリーン車階下席のシートに身を預けます。鎌倉あたりから都心方面に帰る観光客が乗ってくるかと思いきや全く乗ってこず、貸し切り状態で横須賀線を上ります。

大船に着くかどうかの辺りで意識が落ち、気づいたら西大井を出る頃でした。この列車の乗車は次の品川まででしたので、危うく寝過ごすところでヒヤッとした瞬間でした。

 

品川では16分の接続で、21:15発の特急ときわ79号へ乗車。品川からは上野東京ライン直通の常磐線が出ているので、乗り換えなしで取手まで行くことも可能でしょうが、せっかく特急のそれもグリーン車の料金券が用意されていたので、ありがたく使わせていただきましょう。

 

ときわ79号

品川を出た列車は東京に停まり、13時間くらい前に上を走る総武線ホームを通り過ぎた秋葉原を通過。秋葉原を起点に、房総半島、三浦半島を巡る時計回りの大きな円を描いて移動したことになります。

ときわ号は常磐線を快調に飛ばし、品川から40分弱の乗車でに到着。この先特急は取手に停まらないので、ここで後続の列車に乗り換え。6分の接続で最終ランナーとなる普通列車に乗り換えます。最後もグリーン車

 

ラスト1本

 

22:09取手着。

 

 

 

この到着をもって、長かった全行程が終了しました。達成感に包まれます。

総行動時間はおよそ15時間半。長かった。

実行者を試すようなミッションの連続に思わずたじろいだり、時にはズルをしたり……

いろいろあったけど楽しい1日でした。

お疲れさまでした。

 

信じがたいのが、私が取手到着1番乗りなんですよね。

22時だよ?夜10時だよ?なんでまだ旅行が続いてるんですかね……?

(未到着の3人のうち1人は私が組んだ行程を実行している訳なので、33%くらいは私が悪いんですけどね……)

とはいえみんな着実にゴールへ近づきつつあり、私の到着から20分後くらい、40分後くらいに1人ずつゴールイン。スーパー銭湯へ移動しひと風呂浴びたところで、日付が変わる前には最後の1人とも無事合流。これにて、第2回「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」は無事完結です。

 

その後は、コンビニエンスストア、一般的には"コンビニ"と呼称される施設にて、酒類と、飲酒に伴って行われる軽食、いわゆる"つまみ"を購入し、宿泊先に転がり込み「感想戦」を行ったのでした。

今回の経路

 

10【おわりに】

今回も感想戦は白熱しました。午前3時くらいまではやっていたかと思います。

この催しは誰がどの行程を作成したか明かされない状態で進行してゆくので、ここで初めて全てが白日の下に晒され、自らの作成した行程への言及が許されるのです。

 

私の実行した行程についてもいろいろ判明しました。

まず作成者は誰か。これは正直疑問の余地はありませんでした。というのも、4人の中でミッションに盛り込んでくるほどの鈴原希実さんガチ勢(=のんおじ)といえば1人しかいないんですね。もちろん他のメンバーがミスリードを狙ってなりすましている可能性も否めませんが、それにしては手が込みすぎていました。

そしてこれは、前回の第1回で、私を山陰地方場外馬券売場ツアーへ誘った人間と同一人物です。ああ逃れられない!

新事実も発覚します。実は今回の行程とほぼ同じルートで行程作成者が3ケ月ほど前に巡っていたのです。あの妙に詳しすぎる撮影場所の案内地図も、実際に歩いてるんだからそりゃ正確だよ……伊能忠敬かよ…… しかも悟られないために、一切SNS等に投稿していなかったという徹底ぶり。

あとビビったのは、実は当初四国は愛媛県の鈍川温泉へ行かされる可能性があったということです。陸路で。日帰りで。取手到着時間のレギュレーションへ抵触するために断念されて、今回の行程にコンバートされたとのこと。なぜ鈍川温泉かというと、当該温泉をイメージした温泉むすめ「鈍川まなみ」のcvが鈴原希実さんだからという理由です。ああ逃れられない! 

 

onsen-musume.jp

 

ちなみに自分の作成した行程についても当然ここで感想が語られます。実は私の作成した行程はけっこう難産でした。言い訳になりますが、今回は関東発関東着の行程を作成しなければいけない中で、私以外の全員は関東在住歴が長く、日帰りで行けそうなエリアは大体行き尽くされている感があります。もちろん、一度訪問済みの箇所に再度行かせるのだって大いにアリなわけですが、どうせなら新鮮な気分で旅行してもらいたいじゃないですか……?直前に開業した宇都宮のライトレールに乗せるとかいろいろな案を考えつつも、なかなか形にまとまらず、開催数日前になってようやく決まった訳です。実際、食事に困ったとか中途半端な待ち時間を持て余したとか、そういった形で綻びが露呈していたようで、いろいろと反省すべき点が浮き彫りになりましたね。第3回開催の話もあるので、今後に生かせたらと思います。詳細は実行者がそのうちアップしてくれると思いますので(圧力)、そちらをお待ちください。

 

そんなこんなで感想戦を終えた後は泥のように眠り、翌日起きて昼過ぎに山岡家・銀だこ・サーティーワン三種の神器をキメたあと、取手駅で解散しました。こうしてまたみんな、これまでどおりの日常に戻って……



10月21日。京都府亀岡市

上記行程の作成者と、その実行者、つまり私は、「サンガスタジアム by KYOCERA」にいました。約21,600人収容、2020年完成の球技専用スタジアムです。

 

 

お目当てはもちろん、この日開催の京都サンガF.C.湘南ベルマーレ戦のセレモニーに登場する鈴原希実さんです。

スタジアムの最前列での観戦でしたが、すぐ下の通路を鈴原希実さんが何度も出入りするものだから、めちゃくちゃ近かったです。かわいかったです。夢でも見てるんじゃないかと思ったくらいです。

鈴原希実さん……

いやね、もともとキャラクター、桜小路きな子ちゃんが好きだったので鈴原希実さんも気になるキャストの1人だったのはそうなんですが、先月房総半島・三浦半島を歩いて彼女の足跡を辿り、強制的に思いを馳せさせられる経験をしたものだから、どうも狂いをこじらせてしまった感があります。ああ逃れられない!

 

行程シャッフルフェスティバル。それはオタクをより深い沼に突き落とす、業の深い遊びでした。

皆様もぜひやってみてください。

ありがとうございました。

 

 

↓↓↓ほかの参加者の行程↓↓↓

 

hakutakayamamo.hatenablog.com

 

fwbc0416.hatenablog.com





編集記録
11/12 一部の添付画像及びリンクを追加
11/12    誤字脱字及び一部表現の修正

































































 

 

 

 

「スクールアイドルミュージカル」がめちゃめちゃ良かった

あけましておめでとうございます。

先日、「スクールアイドルミュージカル」を観てきました。率直に申し上げてひじょうに素晴らしい公演であり、いくつかのシーンを頭の中で反芻しては余韻に浸る日々です。

しかし残酷なことに記憶は薄れてゆくもので、少しでも抗うべくここに筆を執りました。と同時に、この物語を少しでも多くの人に知っていただけたら嬉しく思います。

 

1 はじめに

ラブライブ!シリーズの新たな新たな展開として、「スクールアイドルミュージカル」の上演が発表されたのは、2022年8月のことでした。同年12月の東京公演と2023年1月の大阪公演。計11日17公演行われます。

 

www.lovelive-anime.jp

 

これまでラブライブ!というコンテンツでは、複数のシリーズに渡り多様なキャラクターを輩出してきましたが、「スクールアイドルミュージカル」はそれまでのシリーズとは一線を画す、完全新作として作られます。登場人物はもちろん、劇中の設定も、演じるキャスト陣も、ラブライブ!としては初の顔ぶれとなります。

 

発表を聞いたとき、大きな期待と若干の不安を感じたのを覚えています。

ラブライブ!シリーズのアニメ内では、劇中挿入歌として登場人物が歌唱を通して状況や心情を表現することがままあり、これはまさしくミュージカルの表現そのものです。現実世界で舞台上で表現するとしたら、題材としてミュージカルとの相性が抜群にいいことは想像に難くありませんでした。

一方で、完全新作というのはどうなんだろう?とも当時は思いました。ラブライブ!シリーズのライブが素晴らしいと感じるのは、キャラクターに愛着を覚える→キャストが本気でステージ上で再現する→オタクが感動する、というプロセスを踏むからという部分が大きく(もちろん例外がいくらでもあることは承知しておりますが)、アニメ等の展開もなしに当日いきなり新しい登場人物に触れて、感情移入できるだろうか、とも思ったものです。

 

2 チケットをとる

濃淡の差こそあれこれまでにラブライブ!の全てのシリーズに触れてきた人間として、当初から「スクールアイドルミュージカル」は1回は観てみようと思っていました。

仕事の予定が若干の怪しかったのと、全公演すぐ満席ということはないだろうという慢心から最速先行は見送り、11月の末ころ一般で滑り込み申し込みました。東京より近いのと、折角行くなら作中で舞台とされている関西で見たほうが面白そうという理由で大阪公演です。

 

 

 

3 大阪へ

1/25の大阪公演としては初日となる回に行くことにしました。

この日は天候が結構ヤバく、折しも前日から数年に一度の寒波が襲来していました。前夜の京都では雪で転轍機が動かず、満員電車に数時間閉じ込められる事態も起こっていた、まさにそんな時です。平日だとめちゃくちゃ安いという理由でかなり前から押さえていた高速バスも、あえなく運休になってしまいました。

あえて雪で大変な状況の関西に突っ込んでゆくのが怖く、実はチケットを握りながらも行くべきかどうか当日朝まで逡巡していました。結局のところ、雪のピークは過ぎていそうなこと、新幹線や近鉄は遅れながらも動き続けていること、そして公式からの中止やチケット払い戻しのアナウンスがないこと(我ながら現金だなぁ)を確認して、出発しました。

 

 

 

今思えば、ここでもう少し状況が悪ければ、最悪1度も足を運ばないまま千秋楽を迎えていたかもしれず、ギリギリながら辿り着けた幸運に感謝です。

 

4 スクールアイドルミュージカル

前置きが長くなりましたが、ここからはミュージカルそのものについて振り返ります。なお、現在のところ公式の発表はありませんが、場合によっては再演等の可能性があることも否めないため、物語の核心には触れず、公式サイト等で明かさてている範囲程度の記述としています。

 

youtu.be

 

まず脚本ですが、話が単純に面白いです。

公式サイト等でも散々語られているので今更ここに記すまでもないでしょうが、本作は2つの学校を舞台としています。芸能コースを擁し学校のブランド化を進める大阪・滝桜女学院と、伝統を重んじる進学校の神戸・椿咲花女子高校。もともと生徒どうしの関わりはなかった対照的な2校ですが、ある出来事をきっかけに出会い、そして ――。というストーリーです。メインの登場人物として、各学校生徒5名ずつと、各学校の理事長(どちらも生徒のうち1人の母親でもある)を加えた12名で物語は進みます。

意識をしているのかどうかは定かでありませんが、いい意味でまるで1クールのアニメを見ているかのような、スピード感と濃密さがありました。休憩やカーテンコールを除いた上演時間がおおよそ2時間弱でしたが、駆け足になりすぎずかといって中だるみもせず、ベストな塩梅だったと思います。

そして、私も初鑑賞の時そう思いましたし、SNS上でも散々言われていることですが、なんといってもしっかり「ラブライブ!」でした。先述の通り本作は完全オリジナルなので、登場人物も学校もグループはじめ、既存シリーズの事物は言葉上ですらほぼ登場せず、一線を画した世界観を表現しています。にもかかわらず、例えば好きなことに打ち込む熱さだったりとか、仲間と高めあう楽しさだったりとか、あるいは現実に直面した際の葛藤であるとか、そういった既存シリーズでも随所に見られたラブライブ!らしいエッセンスを随所に感じられるものでした。

タイトルで「スクールアイドルミュージカル」と銘打っているとおり、本作は「スクールアイドル」という存在そのものに、鮮烈に焦点を当てています。その姿は、本作で初めてラブライブ!シリーズに触れる人にはこれ以上ない導入であったでしょうし、と同時にこれまでにラブライブ!に触れてきてきた立場から見ても、ひじょうに感慨深く、こみ上げるものがありました。あぁ、スクールアイドルって素晴らしいな… 音ノ木坂から結ヶ丘まで、どのシリーズでもいいのでこれまでのシリーズに1度でも心を動かされた経験のあるような人でしたら、何かしら感じるものはあるでしょう。

 

物語はまず、いきなり滝桜女学院芸能コースの面々によるライブシーンから始まります。まずこの時点で高いレベルで仕上がっており、はぇ~っと見とれてしまうわけですが、そこから間髪入れず理事長が登場し、圧倒的な存在感をもって、ライブに見とれていた我々を否が応でもミュージカルの世界に誘います。

この「ライブ」から「ミュージカル」に転換する瞬間は、初見で度肝を抜かれました。なんせライブは今まである程度の回数を参加していてある種の慣れがあっても、ミュージカルとなると片手で足りるほどの鑑賞経験しかないオタクですので、いきなり遠い世界に連れていかれたかのような衝撃を抱いたのを覚えています。

 

先述のとおり2つの学校が舞台になっているので、必然的に場面は両校を行き来しますが、ここの差異を表現する演出は驚きでしたね。ミュージカルというか舞台演劇ってこういうことよくあるんですか?終盤のセットの使い方に関してはほんとに凄まじかったです。詳細を伏せてしまうのがもどかしいですが、分かりやすく例えるなら、「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! ~KU-RU-KU-RU Rock ‘n’ Roll TOUR~ <WINDY STAGE>」における東京ドームの幅100mくらいありそうなクソデカモニターくんと同じくらい、陰の立役者として八面六臂の大活躍をしていました(分かりやすいか?)。

 

そして、劇中の楽曲がホントによかったです。先述の、冒頭で滝桜の面々が披露した『きらりひらり舞う桜』はすごくキャッチ―な楽曲で、気づいたら口ずさんでいるような魅力がありますし、(厳密には劇中の楽曲ではないですが)表題曲というべき『未完成ドリーム』も新たな世界の始まりを予感させるような爽やかな楽曲で、初鑑賞以来ほぼ毎日無限に聴いています。そしてなんといっても『君とみる夢』『ゆめの羅針盤(コンパス)』の2曲がめちゃくちゃに大好きで…… どちらも劇中のかなり重要なパートで披露される楽曲なんですが、ストーリーと良さと楽曲の良さの相乗効果でとてつもない強さを発揮しており、これもまたラブライブ!っぽくて本当に良かったです。『未完成ドリーム』以外の楽曲はもう聴くことできないのマジですか?人類にとって大きな損失ですよ?とか思っていたら5月にアルバムを発売していただけるとのことで、感謝です。

 

もちろん演者のみなさんも輝いていましたね。大変申し訳ないことに、演者の皆さんのことを余り知らない状態での初鑑賞と相成ったわけですが、それぞれが第一線で活躍される方で、演技も歌唱もダンスも素晴らしかったです。とくに本作は完全オリジナルであるので、私たち観客は登場人物ののことをほとんど知らない状態での鑑賞になったわけですが、それぞれがどういうキャラクターであるか、あたかも昔から知っていたかの如くスッと頭に入ってきたのは、脚本と演者の皆さんの演技の功績だと思いました。

アンサンブルのキャストの方々も、両校生徒をはじめ多彩な役をこなさなければならない中、物語の進行に大きな役割を務めており、とても良かったです。そして両校の理事長。理事長なんてチョイ役だろうと当初は思っていたことを恥じました。歌唱力はじめ存在感が半端なかったですし、彼女らのストーリーもしっかり描かれており、なくてはならない存在でした。後から知ったのですが両理事長を演じるキャストはぞれぞれレ・ミゼラブルや宝塚で活躍された方で、そりゃあの存在感も納得だわ…… Twittwrで「キョウマド(=両理事長のカップリング)マジ尊い…」とか書かれているのを見たときはネタかと思っていましたが、強ち間違っていないので恐れ入りました。



第2幕まで終わった後はカーテンコールのスペシャルステージがあります。いわばライブパートであり、劇中楽曲の披露が行われます。観客はこのパートのみペンライトの使用が許され、私もせっかく持って行ったので点灯して振っていました。それまでミュージカルとして見ていた演者やステージに、ペンライトを向けているのはなんだか不思議な感覚も覚えましたが、あの多幸感は素晴らしく、代えがたい経験でした。

 

あとは個人的なアレですが、椿咲花の椿ルリカと皇ユズハの関係がめちゃめちゃ好きなんですよね…… 2人は幼馴染でいつも一緒に何かやってきた仲なんですが、さすがにアイドルまではどうかな…とそこで初めて方向性の相違が明確になり…そして――。、という感じでハラハラさせられながらも目が離せず。ラブライブ!シリーズにおいて幼馴染どうしの描写は結構王道なんですが、王道が王道たる所以を痛感しました。劇中で、ある曲がユズハの作詞であることが明かされるのですが、彼女の立場から歌詞を紐解くと…もう、ホントに…

終演後、気づいたら足が物販会場に向っており、いつの間にか手にはルリカとユズハのアクリルスタンドが握られていました。(偶然か狙ったのかわからないですが、この2人のアクリルスタンド、並べると手を繋いでいるような配置になるのがマジで……)

 

 

 

あと物販は終演後がいちばん混雑していました。みんな自然と向ってしまったのでしょうか。満足度の高さが伺えます。



5 終演、そして

そんなこんなで満足感を胸に抱きつつ、足早に梅芸を出て中津から御堂筋線で新大阪へ。雪で新幹線が遅れており、できるだけ早い便にと来た新幹線に飛び乗りました。

そんな中でふと開いたLINE。オタク仲間から聞かれたミュージカルどうだった?の質問に返した「大阪いくぞ」――。

 

 

 

というわけで3日後の1/28に、2回目を鑑賞しました。正直ここまでハマるとは、まさか水曜に大阪行ったばかりで土曜に行くことになるとは、思ってもいませんでした。

本当は水曜日終演後に、いくらかばかりお得に鑑賞できるリピータ―チケットを買えたら良かったのですが、その時点では週末の再来阪は決めかねていたので、素直に一般販売でチケットを入手。件のオタク仲間も道連れです。

 

物販がの売り切れが多かったことと、劇中に登場する食べ物が「551の豚饅」から「ケンミンの焼きビーフン」に変わっていたくらいしか、当然ですが水曜日の鑑賞時と差異はなかったので、詳細の描写は割愛しますが、正直、2回目の方がヤバかったです。初回鑑賞時は終盤の展開にマジで!??と呆気にとられていた部分も大きかったのですが、2回目となると全て分かった上で観るわけで、こんなんさあッッ 絶対アレじゃん…… 初回は眼がウルっとするくらいでしたが、2回目は滂沱の如くでしたね…… 道連れにしたオタクも満足そうにしていたので良かったです。

 

6 おわりに

さて、ここまでお読みいただきありがとうございました。鑑賞した方には当時を思い出すきっかけとして、未鑑賞の方には、どんなものか知ってもらう機会として、読んでいただけたら幸いです。

オタク仲間道連れにして2回目の鑑賞をしたのもそうですし、今回の記事を執筆したのも、「もったいない」という思いからでした。

無事1/29に大千穐楽を迎えたスクールアイドルミュージカル。今後の展開として発表されているのは、5月のアルバム発売くらいです。

本来ミュージカルや舞台というのはそういう刹那的なものなのかもしれませんし、多方面で活躍する各関係者をもう一度集めて…というのが現実感に乏しいことは承知しています。ただ、どうしてもこのラブライブ!史に金字塔を打ち立てたと言っても過言でない作品をこれで終わりというのは、22年度の冬にたまたま東京と大阪の劇場へ足を運ぶことができた人間だけの思い出にしておくのはあまりにもったいない、という想いがあります。

 

 

 

ただ、まだ望みはあります。上記のとおり、私たちの声次第で、叶えられる物語があるかもしれません。今回筆を執ったのは、そういった側面もあります。

5月発売のアルバムも、要望の声に応える形で発売が決まったと聞きます。

「次」を実現するのは容易いことではないかもしれませんが、信じて待ちたいと思います。

 

君とどこまで行けるのかなんて まだ分からない でもね 永遠って言ってみたくて――

(『未完成ドリーム』より)

「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」を開催しました 

メンバーひとりひとりが大切にしている、旅行オタクとしての気持ち。

 

大切なライバルで、大切な仲間だから――

もっともっと、知りたくなるんだ。

まだ知らない君を、見つけにいきたい!

 

それぞれが大切に作ってきた行程を交換して旅行をすることを決めたオタクたち。

それは、お互いの想いを伝えあうことで――。

 

「ねえ、あなたは誰がどの行程を旅したらいいと思う?」

 
 
 
さる5月4日に、岡山県で「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」を開催しましたので、その顛末を記しておこうと思います。
 
まず、「旅程を他人に押し付けろ! ~行程シャッフルフェスティバル~」って何だよという話ですが、平たく言ってしまえば、複数のオタクが日帰り旅行の行程を作成し、シャッフルして自分以外の別のオタクに押し付けて旅行させるという天下の奇祭です。名称はいつの間にか決まっていました。
詳しいレギュレーションのようなものは↓↓↓同行者のブログ↓↓↓に記されているので、そちらをご覧ください(便乗仏教)。
 
 
 

【岡山出発】

この記事では、実際にオタクから行程を受け取って、そのとおりに1日行動してみた部分を中心に振り返っていきたいと思います。

5月4日。6:25、岡山駅前のホテルを出発。始発でこそありませんが、なかなか早起きの行程を引いてしまいました。
同室のオタクは、8時台出発の行程を引き当てたようで、まだ布団に包まっており、若干の羨ましさを感じながら、静かに部屋を後にしました。
この宿に連泊するので、大きな荷物は置いていけます。

行程によって乗車を指示された列車は、岡山駅を6:34に発車します。
なぜか頭の中で6:43出発と錯覚していて、危うく乗り遅れるところで初っ端からヒヤッとしましたが、なんとか間に合いました。
 

【岡山→松江】

岡山6:34発という時刻で察しのついた方もいるかもしれませんが、指定された列車は寝台特急サンライズ出雲出雲市行きです。
昨夜東京を発って700km以上の道のりを走ってきた列車に、ここ岡山から乗り込みます。

岡山でサンライズ出雲サンライズ瀬戸の分割作業が行われるため、発車時刻より少し前に入線します。
前述のとおり、ホームに下りるのがギリギリになってしまったため、すでに夜明けの色を纏った14両の車体は8番線に停まっていました。
切り離しの様子を見ようと集まる人だかりを横目に、指定された12号車へ急ぎます。
朝早くから開いている売店がホームにありましたが、列を成しており、乗り遅れの恐れがあったので朝食の購入は断念せざるを得ませんでした。

用意された「席」は、12号車のノビノビ座席上段です。
座席とは名乗れど椅子はなく、カーペット敷の1畳ほどのスペースが割り当てられているものです
寝台特急なので本来の目的としては横になって一晩かけて長距離を移動するためのものでしょうが、料金は特急指定席料金と変わらないため、空いてさえいれば気軽に短距離でも移動しやすいのも魅力。かつて東京から沼津への移動の際にもお世話になりました。
ただし、寝台とは違い、同じ区画を別の区間で別の人が使用すること有りうるため、寝具などは場合によっては前の人の使用済みのものがそのまま放置されていることもあるのは、こんな利用の仕方の欠点と言えるかもしれません。
私の区画のブランケットも何となく使用したような形跡がありましたが、さほど気になるものではありませんでした。
 
昨晩、まだ行程を交換する前、すでにサンライズ出雲瀬戸のことは参加者のオタクの間で話題になっていました。絶対に1人は朝一番でサンライズに乗せられる、と言われていましたが、よもや自分がそれを本当に引くとは。
岡山を発車してしばらくすると、他のオタクもホテルを出て続々と駅へ向かっている様子がtwitterに投稿され、企画がもう始まってるということを実感しました。

気づいたら列車は倉敷を過ぎ、県北にある川に沿って中国山地に挑もうとしてました。7:14、備中高梁に停車。
せっかく横になれるスペースがあるので眠っておこうと思っていましたが、いざ寝てしまうと降り過ごしてしまうのではないかという不安と、意外と揺れる乗り心地の悪さから睡眠は断念しました。
座り、うつ伏せ、仰向けを5分おきくらいにローテーションして何となく落ち着かない感じも孕みながらうだうだ過ごしていると、新見に停車。
 
サンライズ号を含めて夜行列車には過去に何度か乗ったことがありますが、個人的には朝目覚めたあと、車窓をぼんやりと眺めながら微睡みと覚醒を繰り返すその時間がいちばん好きです。
定期的に運転される夜行列車はもはやサンライズ号のみになってしまいましたが、なかでもこの「出雲」下りについては、終点の出雲市到着は10時近くとなっており、朝の時間をのんびりと過ごすにはこれ以上なくうってつけです。
 
さすがにまともに何も食べていないので腹が減りました。この列車には食堂車も車内販売もないので、カバンの中をまさぐって、いつ買ったかも覚えていないような携行食を口にします。申し訳程度に設置された車内の自販機で買ったコーヒーとともに、ささやかな朝食としました。
 
2度の運転停車を経ながら、列車は米子に向けて快走します。アナウンスが入ったので見てみたら、通路側の窓からは中国地方最高峰たる、大山の雄姿を拝むことができました。

米子、安来と停まり、9:29松江着。ここで降ります。
 

【松江】

ここ松江ではミッションが課されています。今回交換する行程には、道中で例えば〇〇の写真を撮れ!とか●●を食べろ!といったいくつかの簡単なミッションをそれぞれ組み込むことになっており、早くもその1つ目の地点に到着しました。
 

Mission1:「ボートピア松江」で舟券を購入せよ!

※外観の写真をツイート&ハズレ舟券を持ち帰ってくること!

 
これが1つ目のミッションでした。
今回の催しを行うにあたっては、誰が行程を作成したのか分からないようにしようという取り決めがありました。とはいえ行程の組み方である程度誰が作ったかは想像つくものかと思っていましたが、まさかここまで丸出しで来るとは思ってもいませんでした。地方の場外売場に強いオタクである某参加者のしたり顔が目に浮かびます。
 
行程に書かれてしまった以上、拒否権はありません。ミッションを完遂すべく、行動を開始します。
幸いにも「ボートピア松江」は松江駅から徒歩で10分程度の分かりやすい場所にあり、難なく到着することができました。
 
しかしここで問題が。「ボートピア松江」は10時からの営業であり、すぐさま入館して舟券を購入することができません。これの何が困るかといいますと、松江での滞在時間は1時間強ほどしかなく、駅までの移動時間を加味すると、10時からの入館ではボートピア館内に割ける時間は極めて短くなってしまうのです。今回はハズレ舟券を持ち帰る必要があるので、短時間でことを運ばなければなりません。
コンビニで食料を調達しながら時間をつぶし、10時少し前にボートピア入口に立ちます。周囲にはすでに、開館を今か今かと待ちわびている地元有識者の面々が揃い踏みしており、異様な空気感に圧されながらも待つこと数分、入り口が開き、続々と中に入ります。まさか人生で、地方の場外舟券売場に開店凸する日が来るとは思ってもいませんでした。

せっかく舟券を買うのならレースの映像を見たいと思うのが人情というものですが、どうもそれは厳しそうです。というのも、どの会場のどのレースを選んでも、舟券購入からレース発走、そして確定・払戻の間全て滞在してしまうと後の行程に支障を来してしまうことになるのです。仕方がないので、レースは見られないこと前提で、最も近い時間に始まる、唐津競艇の第4レースの券を適当に買って、ボートピアを発つことにしました。ミッションの条件が、「ハズレ舟券」を持ち帰ることなので、万が一当たってアタリ舟券になってしまうと困るため、絶対に重複して当たることのないよう、3連複を2点、計200円購入しました。開店凸からわずか十数分でボートピアを後にするときは、自分何やってるんだ感がすごかったです。
 

【松江→宍道

松江駅に戻り、再び山陰本線を下ります。指示された列車は、10:39発、特急やくも3号、出雲市行き。用意された自由席特急券を片手に乗り込みます。もう次の停車駅で降りるため、乗車時間はわずかに12分。それでも車窓右手に見える宍道湖の景色は慌ただしい行程の中で一時の癒しになりました。

車内で先ほど購入した唐津競艇の結果を調べたところ、無事全て外れていたことが分かりました。
 

宍道→木次】

宍道湖のほとりに近い宍道駅に到着。ここで特急を降車します。ちなみに用意された乗車券は、「岡山→(山陰経由)→倉敷/倉敷→岡山」の連続乗車券なので、倉敷までは途中下車、改札を出ることがができるものでした。せっかくなので一度宍道でも改札を抜けました。
ここは特にミッションが設定されているわけでもない、ただの乗換駅。ここから延びる、中国山地に分け入る国内でも有数のローカル線、木次線に乗ります。

最近このあたりのローカル線は存廃が取りざたされることが多く、今のうちに乗っておこうとオタクが殺到した結果積み残しが発生した、なんて話も聞いていたので、GWということもあり大混雑を警戒していましたが、蓋をを開けてみれば2両編成のディーゼルカーロングシートに問題なく全員座れる程度の混雑で、とりあえず一安心。青春18きっぷのシーズンから外れているからかもしれません。11:19、宍道発。
宍道から木次までの間はローカル線といえども比較的開けている区間であり本数も多く、旅行者に混じってちらほらと地元利用客や帰省客っぽい面々も見受けられます。30分強で木次に到着しました。
 

【木次・三刀屋

木次(きすき)は島根県雲南市の一地区であり、かつては独立して町制を敷いていました。

木次線自体はかつて乗車したことがありましたが、途中駅で下車するのは初めてです。このような機会でなければ降り立つこともなかったかもしれません。失礼ながら、意外と駅前が都会的なことに驚きました。正面には大きめのスーパーマーケットがそびえ、南側へは商店街が伸びています。木次の本当の中心部は、この商店街を辿っていった、もっと南にあるようです。
 

Mission2:「BAOO 三刀屋」で馬券を購入せよ!

※外観の写真をツイート&ハズレ馬券を持ち帰ってくること!


これがこの地で行う2つ目のミッションでした。どうやらプラン作成者は公営競技の場外売場を周遊することを旅行と捉えているようです。そんなバカなと思わなくもないですが、実際にそういう旅行を好んでいる人間に大いに心当たりがあるので、仕方がありません。今回の催しの肝となる部分に、「自分が行ってみたい行程を組んで、それを他人に押し付ける」という点があるので、完全に趣旨には沿っています。
木次線列車の到着を受ける、コミュニティバスが駅前に停車していました。一瞬乗ろうかと迷いましたが、運行経路がよく分からずとんでもないところに連れていかれたらたまらないなと思ったのと、行程上の指示もされていなかったこともあり、見送りました。後で調べたところ、そのバスに乗っていけば素早く目的地近くまで行けたようです。まぁ次の列車まで時間もあるし、天気にも恵まれているので、のんびり歩いて向うことにしました。とはいえ朝食も適当にしか食べていなかったからか腹が減りました。ひとまず駅前の「フーズマーケットホック 雲南店」に吸い込まれます。幸いにもイートインコーナーがあったので何か調達して食べることにしました。せっかくなので何か地のものを食べたいなと思っていた矢先に見つけたのが出雲そば。スーパーで売られているものも、お店で見るような3段の割子を模した容器に入れられていたのには驚きました。(コストかかるだろうに……すごい…)それと目について美味しそうだった穴子寿司とともに昼食になりました。フードコートを転用したと思われるイートインコーナーの片隅のテレビからは、北の国から飛翔体が発射された旨のニュースが流れていました。腹ごしらえも済んだところで、目的地のBAOO三刀屋に向けて出発します。一応今回の行程作成時のレギュレーションとして、「連続で徒歩移動できるのは2kmまで」というものがありました。これは、例えば「峠越えの数十キロを徒歩で移動する」みたいな体力勝負のトンデモ行程を押し付けられないようにしよう、という観点から設定されたものです。今回のこの徒歩はどうなんだ、もしかしたらレギュレーション違反じゃないのか、だとしたら今夜の反省会でとっちめてやる、などと思いながらGoogleで駅からの距離を調べてみたら片道1.9km。どうやらこのあたりかなり巧妙に練られた行程だったようです。駅を出てすぐ斐伊川に突き当たります。ヤマタノオロチ伝説とも関わりがあるといわれる、中国山地を源に宍道湖に注ぐ、島根県でも有数の河川です。このあたりは堤防が桜並木となっており、春には桜の名所となるようです。桜の時期は終わってしまいましたが、上流に目を向けると、川沿いにたくさんの鯉のぼりが揚げられており、新たな季節の訪れを感じさせられます。
木次大橋を渡り、斐伊川の左岸に出ます。家々に目をやると、中国地方でよく見られる、鮮やかな赤褐色の石州瓦を冠したものが多く、青空と新緑と石州瓦のコントラストがキレイでした。

しばらく歩くと三刀屋の町に入ります。木次と三刀屋は歩いた感じ連続している一つの町のように思えますが、21世紀初頭まではそれぞれ別の自治体であったみたいです。町境に位置した松江自動車のインターチェンジ名も「三刀屋木次」と、両方の名前を採っています。
件の松江自動車道の高架をくぐると程なくして場外馬券売り場のBAOO三刀屋が見えてきます。先述のように例の仲間内に公営競技やその場外売場に関心の高いオタクが複数いるので、しばしばこういった場外売場の立地について話題にのぼることがあります。その多くはある程度人口の集中する地域に立地するわけですが、ともすればNIMBY、迷惑施設に分類されかねない特性上、何らかの力が働いて、あって然るような都市部になかったり、もしくは逆になんでこんなところに??と目を疑うような地方部にあったりするのが面白いところです。今回訪問するBAOO三刀屋は、後者の中でも最たるもので、たびたび話題に挙がっていたので私としても聞き覚えがありました。㈱日本レーシングサービスの運営する場外馬券売り場「BAOO」ですが、他の売り場の立地を見てみると、「高崎」「宇部」「博多」「荒尾」「天文館」とそこそこ人口の多い地域に立地しており、「三刀屋」の異常さが際立ちます(次いで鳥取市の東隣・岩美町に立地する「鳥取岩美」もヤバそう)。なお、BAOO三刀屋については、かつては福山競馬場(2013年廃止)の場外売場である「シャトル三刀屋」として存在したのが、BAOOに引き継がれているみたいですね。不本意ながら詳しくなってしまった。
 
着いてみるとBAOO三刀屋は意外にも大きな施設です。もしかしたらパチンコ店か何かの居抜かもしれません。入口に回ってみると「入場制限」と書かれた文字が躍っており、ウソでしょ!?と一瞬思いましたが、何のことはなく、混雑時に入場制限かけるかもという旨の掲示でした。実際は体温だけ測って、すぐに入ることができました。
施設が大きいだけあってか内部もゆったりとしています。およそ20~30人ほどの先客がいましたが、これが多いのか少ないのか判断に困ります。一応この後そこそこ大きいレースがあったため。多いほうなのかもしれません。
ここではボートピア松江のときとは違って、馬券購入からレース観覧、払戻まで滞在するだけの時間は十分にあるため、ネットの情報を参考にそれなりに予想して買ってみました。とはいえ地方は全く分からない(中央が分かるとは言ってない)ことには変わりないので、結局目についた面白そうな馬を適当に選んだだけですが。

 

結果ですが、最初に園田競馬複勝1点500円買ったら当たって1.2倍くらいついたので、気をよくして財布の中に溜まった小銭の一掃も兼ねて名古屋競馬のワイド1点1000円突っ込んだら見事に飛びました。とはいえ無事にハズレ馬券の確保成功です。本当にありがとうございました。
次のレースで取り返してやる!という気持ちが起きなくもないですが、列車の時間が決まっているため、幸か不幸か引き上げざるを得ません。結局40分ほど滞在して、少し余裕をもって14時前にBAOOを後にしました。
木次駅までの道のりはゆっくり歩いて30分弱です。先ほど通った木次大橋を再び渡って駅に向かいます。橋の上から斐伊川を見下ろすと、写真に撮ってしまうと本当に何てことない風景なんですがこれがとにかく鮮やか心地よくて、数分ほど見とれてしまっていました。と同時に覚えた、縁もゆかりもなくつい十数時間ほど前まではここに来ることさえ決まっていなかった自分が、今この景色の中に立っていることが奇妙に思えるような不思議な感覚。この行程を押し付けられなかったら、味わえていなかったことでしょう。

少し早く駅に着いたので、件の駅前スーパーでご当地の牛乳を買って飲んで小休止。その後に乗り込むのは、木次駅14:36発の列車です。
 

【木次→備後落合】

この14:36発の列車は絶対に逃がせられませんでした。というのも、この列車は木次線の終点、備後落合まで行く最終列車であり、乗り遅れると行程が完全に崩壊してしまいます。BAOO三刀屋を少し早めに出たのもこのためでした。


車内は木次まで乗ってきた列車と同様に、1両単行で走るディーゼルカーにはそこそこ乗客はいるものの、座る座席がないほどではありませんでした。ただこれまでの区間と違い、乗客の内訳はほとんど旅行者と思われ、地元の利用客はほんの僅かといった感じ。私はあまり人のいない車両後部でのんびりと過ごしました。

15:40頃、出雲横田駅に到着。ここで15分ほど停車する旨のアナウンスがかかり、小休憩とばかりに私も含め多くの旅行者がホームに降りました。出雲横田は木次以南の木次線沿線では大きな町で、この駅を終点とする列車もあります。駅舎には出雲大社のものを模した大きな注連縄が掛けられており、存在感を放っていました。
15:52に出雲横田を発車。実はこの駅までは後続の列車もありましたが、ここから先備後落合方面に向かう列車は正真正銘の最終列車です。
16:13頃、出雲坂根駅。ここでは4分ほどの停車です。ホームの片隅から湧いているという名水・延命水を飲んでみようかとも思いましたが、いまいち場所が分からなかったのでまたの機会にお預けです。
ここ出雲坂根木次線のハイライトとされます。ここから広島県方面に向けより急峻になる中国山地の勾配に挑むため、進行方向を2度変えながらジグザグに山を登ります。例えば箱根登山鉄道など、急勾配区間を抱える路線でよく用いられる「スイッチバック」という設備ですが、3段に及ぶスイッチバックは全国でも数えるほどしかありません。

出雲坂根を発車する際には、それまで車両最後尾だった自分の座っているほうへ運転手がやってきて、こちらが「前」になります。しばらく坂を登ってまた別の折り返し地点に着いたら、運転手は再びもともといた運転台の方にもどり、再びこちらは「後ろ」になります。2度目の方向転換を終えしばらく走ると、山肌のはるか下のほうにさっきまでいた出雲坂根駅のホームが見え、先人の知恵と工夫で獲得したこの標高差を実感するという寸法です。

スイッチバックを終えたら再び山肌に沿って進みますが、しばらく走ると谷の向こう側に壮大な構造物が見えます。国道314号の「おろちループ」と名付けられたループ橋で、ヤマタノオロチがとぐろを巻くかの如く2重にループして高度を稼いでいます。一般的に道路は鉄道より勾配に強いはずですが、その強さをもってしてもここまで大掛かりな構造部を拵えてようやく越えられるほど、越えるべき山が険しいことが見てとれます。おろちループの中には道の駅も設けられ、観光名所になっているみたいですね。

ところでこの木次線、乗ってると気づきますがめちゃくちゃ遅いです。木次から出雲坂根に関して言えば、40kmほどの距離を2時間弱かけて走っています。理由としては、もちろん出雲横田であったような長時間の停車があるのも一因ですが、やはり単純にスピードが遅いということが主要因かと思われます。一部区間では25㌔という自動車はおろかガチった自転車にすら抜かれそうな速度での走行が余儀なくされるよう。この極端に遅い制限速度は、木次線に限らずJR西日本管内のローカル線ではわりとよく設定されており、線路に異常があった場合に速やかに停まれるようにしているという一応の合理性はある施策みたいですが、コストカットもここに極まれりという様相です。試しに木次から備後落合までを鉄道と自動車それぞれで移動した時間をGoogleで検索したりしてみましたが、鉄道利用は自動車利用の倍の時間を要すみたいでした。3段スイッチバックと2重ループがちょうど好対照になっていますが、戦前に作られ原則線形はそのままの鉄道と平成になってから改良が完了した道路を同じ土俵に立たせること自体が、そもそも酷な話なのかもしれません。とはいえ、私らのように人生のうちで何度かアトラクション感覚で乗るのならまだしも、地元の人が公共交通として日常利用するにはあまりにも厳しいものがあるよなぁと思わざるを得ませんでした。
そんなことを思っている間にも木次線はゆっくりと着実にその歩を進め、国境の峠を越えて17:01、広島県備後落合駅に到着しました。
 

【備後落合→塩町】

備後落合は3方向へ線路が伸びる結節点ですが、そのいずれも有数のローカル線であり、周囲には人家もまばらで、本当に結節の役割だけを担っているような駅です。かつては本当に鉄道の一大拠点として賑わっていたとのことですが今は昔。一日に数回ある乗り換えのタイミングににわかに人が行き交うのみです。

この時がまさにそうで、木次線列車から降りた人々は17:15発の芸備線三次方面の列車へ乗り換えるようで、私も例外ではありません。

乗り換えた三次行き列車は今まで乗っていた木次線のものと型は同じようですが、車内の一部がボックスシートになっていました。とはいえ乗り込んだのが遅くめぼしい席は大体先客に取られてしまっていたため、例によって大人しく車両後部のロングシートに収まります。
備後落合を出た列車は、しばらくの間例の極端に遅い制限速度の下走行します。しかもそれが結構な距離に及んでいたので、大丈夫かよ…と心配すら覚えました。
速度を取り戻すころ、さすがに朝から動き続けていることもあり、急に眠気が襲ってきていつしか夢の中へ……。結局目覚めたのは降りる予定の駅の少し前で、危うく寝過ごすところでした。仮にこのまま終点まで行ってしまっても行程に復帰することはできるはずですが、ミッションを1つ取りこぼしてしまうことになります。
 

【塩町】

Mission3:「いまちゃんお好み焼き」で広島風お好み焼きを堪能せよ!

※写真に収めてツイートすること!

 

塩町に18:23着。ここで下車します。さて、上記のようにミッションが設定されていますが、実はこれ、相当難しいミッションです。というのも、前日にホームページを見て知ったのですが、「いまちゃん」というお店、昨今の情勢によりラストオーダー18:30となっており、下車から7分しか余裕がありません。Googleマップによると駅から店舗までは徒歩で5分と出るので不可能ではないと思いますが、ちょっとでも道を間違えたりしたらアウトでしょう。道順を頭の中に叩き込み、最善を尽くすしかありません。
乗車券を運転手に提示し、開扉直後に素早く下車。ホームから駅舎へ向かうのに階段を介す必要があったのは想定外でしたが、それ以外は事前にシミュレートした通りに、やや早歩きで最短ルートを辿ります。店舗に着いたのは18:28と2分前でした。店内にはほとんど客の姿がなく、一瞬万事休すかと覚悟しましたが、「まだ間に合いますか!?!?!?!?!」と聞いたところOKでしたので、ほっと一安心。

 

メニューはいろいろありましたが、迷っている時間ももったいないので、王道を征く人気No.1の「肉玉そば」をオーダー。広島風お好み焼きを食べるのはかなり久しぶりなので楽しみです。
10分ほど待って運ばれてきたお好み焼きは、まるでクレープのように折りたたまれていました。このお店のスタイルなのでしょうか。折りたたまれた生地の中にはソースの絡んだ焼きそばがたっぷり包まれており、ひじょうに大満足の一品でした。ボリュームが結構あったので19時の閉店までに食べきれるかと一瞬気をもみましたが、あっという間に平らげてしまいました。ごちそうさまでした。
「いまちゃん」を後にして、元来た道を辿り駅に戻ります。西日本ということもあり5月上旬でもだいぶ日没が遅かったですが、すでに19時を回っているということもあり、さすがに夜の帳が下りつつありました。

 

【塩町→倉敷】

塩町19:17発の福塩線府中行き列車を待ちます。この列車も府中までの最終列車です。
ちょうど列車がホームに入ってくるころ、地平線に彼方に日が没し、美しいグラデーションを見ることができました。誰もいない中国山地の山間の駅で迎えるブルーアワー。今回の行程で、最も印象に残った瞬間でした。

福塩線は、その名の通り福山と塩町を結ぶ路線です。この路線で、久しぶりの瀬戸内側に戻ります。車内には10人弱ほど乗客が乗っていましたが、いずれも三次市街から帰宅する客なのでしょう、途中駅であらかた降りてしまい、しまいにいは乗客は私一人になりました。
もうすでに日はどっぷりと暮れ、山間を縫う線路の周りからは灯りもほとんど消え、闇夜を割いて列車は走ります。誰もいない車内から真っ暗な車窓を眺めていると、本当にこのまま府中へ出るができるのだろうか、いまどこを走っているんだろうか、いや本当に走っているんだろうか、などと荒唐無稽な不安感が過ったりもしますが、駅に停まるたび、現実に引き戻されます。
結局乗客は自分だけのまま、列車は終点の府中に到着しました。府中は福塩線としては路線の途中の駅ですが、この駅を境に路線の性格が分かれるため、運行系統が分断されており乗り換えを要します。

乗り換えた福山行きの列車は4両編成で、これまで乗ってきたローカル線と比較すると長大編成といっても差し支えない規模ですが、軽く立ち客が出るほど混雑していました。GWの21時近い時間に府中から福山へ向かう流動とは、一体どんな需要なんですかね。
府中→福山なんてすぐ着く距離だと思い込んでいたら案外長く、50分弱かけて福山へ到着。ついに山陰側から瀬戸内側に帰ってきました。

福山から乗るのは新幹線。21:52発の新大阪行きこだま868号です。駅のアナウンスを聞いていると、8両編成で1号車と8号車の端には出入り口がないので注意しろとの旨の放送が。これはもしや……と勘づいたところに入線してきたのは、流線形にライトグレーの、500系新幹線。幼いころ憧れたあの車両にまさかここで乗ることができるとは思ってもみませんでした。以前1度だけ乗ったことはあるんですが、その時はハローキティ新幹線として走っていたものだったので、元来の装いをした車両に乗るのは初めてです。乗車時間は極めて短いですが、楽しみましょう。
ところで、このまま乗っていれば僅か2駅で岡山に着けるのですが、どいうわけか私の手元には次の停車駅、新倉敷まで特急券しかありませんがそれは……

はい、行程通り、わずか11分の乗車を経て新倉敷で降ります……。しかもここでの乗り換えは新幹線から在来線へのものなのに僅か2分しかありません。今回の行程の上で、おそらく松江や塩町以上にタイトです。終電ではないので逃したら帰れなくなるというわけではありませんが、帰着が遅くなることは確実なのでできればここは乗り換え成功たいところ。
階段に近そうな車両のデッキに陣取って、開扉と同時に飛び出し、素早く階段を降ります。乗り換え改札を抜け、山陽本線ホームへ。幸いにも新倉敷は新幹線と在来線が大きく離れたような駅ではないので、なんとか間に合わせることができました。乗った列車は岡山ゆきなので、このまま乗っていれば岡山まで行けるわけなんですが、わざわざ乗り換え芸をさせている以上、そんな素直に帰れるはずもなく……
22:15。降り立ったのは倉敷。もう岡山は目と鼻の先ですが、なぜこんなところで降ろされるのでしょう…?もう時刻は22時を回っており、常識的に考えて、まさかこんな時間かにミッションが用意されていることなどあり得ないと思いますが……???
 

【倉敷】

Mission4:「倉敷市民会館」でLiella!に思いを馳せろ!

※写真に収めて夏草ツイートすること!

 

はい、ですよね(諦観)。用語の解説に移ります。
 
『Liella!』(リエラ):
メディアミックス作品群『ラブライブ!スーパースター!!』に登場する架空の9人組女性スクールアイドルグループ、およびそのキャラクターの声を演じる声優達による実在の9人組女性声優ユニットの名称である。
 
『夏草』(なつくさ):
あるできごとのあった現場のようすが、すっかり変わってしまっていることのたとえ。芭蕉(1644-1694)が、公演が終わりすっかり人の気配のなくなったライブ会場を訪れ、「女性の声優一睡の中にして、オタクの跡は一里こなたに有。物販が跡は田野に成て、会場のみ形を残す。(中略)『国破れて山河あり、城春にして草青みたり』と笠打敷て時のうつるまで泪を落し待りぬ。  夏草や 兵共が 夢の跡 」と詠んだことに由来する。

 

 

 

とまぁつまり、要約するとライブ会場行って写真撮ってなんかそれっぽいしみじみとした感じでツイートしたらいいんですよね。こんな時間から。

ちなみに上記の『夏草』の解説は普通に大嘘の上に全世界で5人くらいしか使っていない用語なので秒で忘れてください。『Liella!』のほうは一応Wikipediaから引っ張て来た本物?です。TVアニメ第2期が7月17日午後7時よりNHK Eテレにて放送予定なので、ぜひ覚えて帰ってくださいね(媚びを売る)。

www.lovelive-anime.jp

 

閑話休題、「倉敷市民会館」は駅から結構距離があります。行程表には「タクシーを利用してもOK」と記載があり、御丁寧に封筒に現金も入っていたので、ありがたくご厚意に預かろうと思います。

タクシー乗り場がよく分からず無駄に駅前をぐるぐるしてしましましたが、何とかタクシーを拾い、市民会館へ直行。

 

ものの5分ほどで、会場に着きました。写真を撮って、それっぽいツイートをして、ミッション完了!これでこの行程の全ミッションを終えました。感無量です。本来我々の仲間内で行われている「夏草」ツイートは、昼間の喧騒と夜間の静寂を対比させてしみじみとした寂寥感を表現するものなんで、2021年11月に行われた「ラブライブ!スーパースター!! Liella! First LoveLive! Tour ~Starlines~ 岡山公演」に参加していない人間が行う「夏草」に意味はあるのかという疑問が湧きかけますが、この際いいでしょう。

 

【倉敷→岡山】

とはいえこれでほぼ行程は消化しました。心地よい達成感とともに、倉敷駅に戻りましょう。予定の列車まで少し時間があったので徒歩で向かいます。途中ライトアップされた夜の美観地区を通りました。またこのあたりに泊まってゆっくり散策したいなぁとか、地区美感じるんでしたよねとか思いながら、帰路につきます。

 

倉敷22:53発、行程通りの列車に乗って岡山駅23:10に到着しました。徒歩数分のホテルに戻って、これでホントのホントに行程、完全に完了です。お疲れさまでした。

総移動距離およそ400km(Googleタイムラインベース)、総活動時間およそ14時間半のなかなかハードな行程でしたが、驚くべきはこんな時間なのにホテルに帰ってきたのは自分が最後ではなく、まだ行動中の参加者がいたみたいです。わけがわからないよ。

 

 

 

【おわりに】

全員ホテルに帰ってきた後には反省会が執り行われました。これは、各自の行程を振り
返りながら発表し、行程作成者の感想や意図とかも聞きながらやいのやいの言い合う会です。建前上、行程は誰が作成したのかをブラインド状態で行うことになっていたため、ここで初めて自分の作成した行程への言及ができます。それぞれ自分の実行した行程を毀誉褒貶したり、作成者がそれに反駁したりと、議論は尽きず、午前3時くらいまでやっていたかと思います。
私の旅行した行程について分かったことを記しておきます。作成者はやはり件の場外馬券売り場のオタクでした。意外だったのが、ぱっと見ヤバい行程に見えて実のところ実行者のことを考え抜いた、ホスピタリティあふれるものだったということです。確かに思い返せば、体力的にキツかったり逆に暇を持て余したりすることはほとんどありませんでした。これは積極的に特急列車を使ったり、何もない場所で長時間待つことのないよう、時間を使う場所を調整していたとのことの賜物のようです(最後の倉敷市民会館は言い逃れできないと思うんですがそれは)。なるほどなぁと深く感心しました。ちなみにお好み焼き「いまちゃん」のラストオーダーRTAが発生したのは、作成者も想定外だったとのこと。
今回集まった4人は、何度も旅行を共にしている間柄だったので、正直行程の組み方はある程度似通ってきそうな気がしてたんですが、蓋を開けたらやっぱり個性が出るものなんですね。ともかく、自分ではなかなか行こうと思わない場所に行けたり、思いもよらない行程の組み方に出会ったりと、すごく新鮮な驚きにあふれた催しになったので、やった意義はあったなぁと思います。第2回の話もちらほら挙がったので、もしかしたらまた開催するかも……?もう1度やりたいぜ。
まぁただ思うのは今回の催しですが、他の参加者もブログでも述べられていますが、金額や活動時間にあまり縛りを設けなかったので、結果的に特殊な訓練を受けたオタクにしか実行できないような行程が複数生まれてしまった側面があります。結果的に私たちは全員帰ってこれているので無問題ですが、参加者層によってはレギュレーションでうまく調整する必要があるかもしれません。あと今回は、参加者が山陰・瀬戸内・九州・四国と散らばったのに奇跡的に全員天気に恵まれたのが本当に運がよかったなと思います。
ちなみに私の作成した行程についても、実行者から概ね好評を得られたのでほっと一安心しました。強いて反省点として挙げるなら乗り物酔いへの配慮が甘かったことと、(他人の行程が全く分からない特性上仕方ないことですが)最遠で大分県まで行く行程があった中で、ちょっと小さくまとまりすぎたかなという点でしょうか。詳細は実行者がブログにまとめてくれているので、ぜひ読んでみてください。あとはまぁTwitterハッシュタグ「#行程シャッフルフェスティバル」で当日の生の声なんかも残っているかと思うのでそちらもどうぞ。
 
↓↓↓私の作成した行程を実行した人↓↓↓
 
↓↓↓私の実行した行程を作成した人↓↓↓
 
 
 
ありがとうございました。
 
 

旅行記 2020 07 てくてく千歳

北海道の玄関ともいうべき存在、新千歳空港を擁する千歳市。ともすれば札幌はじめ道内各地への通過点になりがちなこの街ですが、スルーするのに勿体ない魅力的なスポットが沢山ある街でもあります。そんな千歳市を散策しました。

 

午前3時に自宅を自動車で出発。衣浦トンネルを通って常滑、電車に乗って中部国際空港へ。朝早い時間に発つ便に搭乗します。ラウンジではビールが無限に作れるので、朝7時台から飲酒するダメ人間と化しました。

f:id:gonzalezkw:20200810004828j:plain

朝から

 搭乗したANA701便は、過去の経験と照らし合わせてもトップクラスにガラガラでした。体感ですが、50パーセントほどの搭乗率でしょうか。通路を挟んでで左右に3列ずつあるシートのうち、ほとんどの箇所で1人ないし2人分しか埋まっておらず、完全に空席になっている列も見受けられました。私の座ったシートも隣、そしてそのまた隣とも空席で、その気になれば寝転ぶこともできそうです。怒られると嫌なのでやらないけど。平日の朝早い便であることと、昨今の情勢の影響でしょう。

アナウンスでは、高性能なフィルターを通して機内は常に換気されているので安心してほしいという旨の呼びかけがありました。また、(これにどう効果があるのかあまり分かりませんが)機内サービスの飲み物は緑茶とミネラルウォーターに限定されていました。さらには機内誌も座席ポケットには入っておらず、数か月前とは状況が一変していることを嫌でも実感させられます。航空会社としても、ただでさえ航空需要の激減で大赤字を被っているなか、自社便で万一のことがあれば……と戦々恐々なのかもしれません。

f:id:gonzalezkw:20200810095255j:plain

木曽三川上空

以前旅した、愛知・岐阜・三重の県境地帯を北に向けて飛行します。最初こそ晴れていて地上の様子もはっきりと見て取れましたが、次第に雲が厚くなり終いには全く見られなくなりました。朝はが早かったこともあり、しばらくは睡眠に充てました。

 

10時過ぎ、飛行機はほぼ定刻に新千歳空港に到着しました。さて、今日は札幌市に宿泊することは決めていますが、それまでの予定はこれといってありません。大まかでおぼろげなプランは考えていましたが、基本行き当たりばったりの行動になりそうです。ひとまずラウンジに入って小休止。ラウンジ内のロッカーに荷物を入れたまま外出しても構わないと係員に言われたので、ここにキャリーケースを預けておくことにしました。

 

 

youtu.be

察しのついている方も多いかもしれませんが、千歳市は『ラブライブ!サンシャイン!!小原鞠莉役等で知られる声優・鈴木愛奈さんの出身地であり、PR動画も作成されています。今回の訪問も、紹介されている場所はじめゆかりの地を訪れたいという動機が結構なウェイトを占めています(白状)

 

また、鈴木愛奈さんが出演するアニメ、『邪神ちゃんドロップキック(邪神ちゃんドロップキック')』(以下『邪神ちゃん』)では、千歳市ふるさと納税で寄付を募り、千歳市が舞台となっている『千歳編』が製作されました。Amazonプライムで見られます。

 

https://jashin.welcome-to-chitose.jp/

そしてそれに連動して声優陣のサイン入りパネル、看板、アニメの原画が市内各所に期間限定で設置されています。こんな感じで、千歳市はいまアニメ・声優といったサブカル方面への観光アピールに結構力を入れているようです。実際のところ、TwitterのFF内でも、鈴木愛奈さんや『邪神ちゃん』に関連して千歳市を訪れる人がちらほら見受けられます。

ちなみに『邪神ちゃん』についてなんですが、実は私は『千歳編』しか観ておらず、ストーリーをほとんど把握していないという有様です。なので真剣にカット回収をしようとか、全てのパネルを見ようとか、コラボフードを制覇しようとかそこまでの意気込みはありませんが、「あ~ここアニメで見てたな」くらいの気持ちで臨む、ゆるい聖地巡礼になっています。

 

 新千歳空港からJRで千歳駅へ移動。少々早いですが、まずお昼ご飯にします。

f:id:gonzalezkw:20200810135125j:plain

千歳市錦町4丁目付近の風景

 

向かったのは「太陽の恵み」さん。ここは自身たぶん5回目?の訪問です。鈴木愛奈さんのご家族がやっているお店です。千歳駅からうまく「北栄小学校」もしくは「北斗1丁目」ゆきのバスをつかまえることができればそれを使うのが便利なんですが、あいにく時間が合わなかったので徒歩で向かいました。25分ほどの道のりです。

 

f:id:gonzalezkw:20200810141042j:plain

「太陽の恵み」さん

「太陽の恵み」さんに到着。店の前に車が多く並んでいましたが、平日とあってか今日は特に待ち時間なく案内されました。かつて札幌や旭川でアニメ関連のイベントがあった際には入店まちの行列ができたり、整理券を配って対応したりもしました。見た感じ地元のお客さんがほとんどのようでしたが、ちらほらアニメファンっぽそうなお客さんも見受けられました。

 

 

f:id:gonzalezkw:20200810141049j:plain

絶品の「トロトロオムライス」

ここではほぼ毎回「トロトロオムライス」を注文しています。ふわふわの卵と、デミグラスソース、バターライスの絡み合う味が本当に絶妙で、何度来てもこればっかり食べてしまいます。ボリュームもかなりあるので、ここで昼食と決めている時には朝食は軽めにしています。聞く話によると、「醤油ラーメン」や「ザンギ」も美味しいらしいので、いつか食べてみたいですね。

f:id:gonzalezkw:20200810143235j:plain

「太陽の恵み」さん店内(2019年6月撮影)

店内には主に鈴木愛奈さん出演のアニメ関連ポスターやグッズが展示されています。今回はお客さんも多く店内の写真はあまり撮っていなかったので、写真は前々回訪問した際のものです。実はこの訪問翌日が鈴木愛奈さんのお誕生だったため、ファンからのものであろうお祝いの花が届いていました。

さて、「太陽の恵み」さんですが、実は訪問の少し前にリニューアルをしています。伝聞情報しかないのでアレですが、どうやらこのお店はそのまま営業しつつ、別のお店も開くとかで、その準備でしょうか、メニューや営業時間が変わっています。訪問ご検討されている方はご注意ください。

f:id:gonzalezkw:20200810144802j:plain

ヒグマ出没・注意

食べ終わって「太陽の恵み」さんを後にしますが、またしてもちょうどいいタイミングで運行されているバスの便がなかったため、とりあえず南に向けて歩くことに。この日の千歳の最高気温は約22度で決して暑すぎるということはありませんでしたが、セイコーマートツルハドラッグに寄り道して休憩しながらのんびりと。

 

f:id:gonzalezkw:20200810191557j:plain

すごく広い青葉公園

千歳川にかかる青葉公園橋を渡り、30分ほど歩いて青葉公園に到着しました。ここは丘が丸ごと公園になったような場所で、各種競技場や図書館、神社などが点在しています。鈴木愛奈さんも部活動でここの陸上競技場によく来ていたというエピソードを聞いたことがあったので、そちらまで行ってみようかと思いましたが、案内図を見ると公園はとても広く、結構遠そう… 早朝から動き続けているせいか疲労が溜まっており、またの機会にすることにしました。

f:id:gonzalezkw:20200812211013j:plain

千歳市の図書館

公園の中にある図書館の前から次の目的地へ向かうバスが出ることが分かりましたが、出発まで1時間弱あったので、図書館で適当に過ごしました。地元以外の図書館に行くのってなかなか新鮮な体験ですよね。

 

f:id:gonzalezkw:20200812215408j:plain

サケのふるさと

https://chitose-aq.jp/

図書館から千歳駅を跨いで市街北東へ足を延ばすバスに乗り、千歳水族館に向かいました。「千歳水族館入口」バス停より5分ほど。「サケのふるさと 千歳水族館」です。入館料は大人800円(JAF会員等割引あり)。1500円の年間パスポートもあるので、年に複数回訪れるならば買ってみるのもいいかもしれません。

さて、淡水魚に特化したここの水族館、すぐ横を千歳川が流れており館内から川の中を覗ける窓があります。今日はどんな感じでしょうか。

 

 

f:id:gonzalezkw:20200812222925j:plain


ダメでした。

 

f:id:gonzalezkw:20200812223718j:plain

2019年6月撮影

 

水族館の名誉のために補足ですが、この日こそほとんど魚らしき影は見られず、数分に1匹思い出したかのように窓の前を横切る程度という惨憺たる結果でしたが、昨年に訪問した際には窓いっぱいに魚影が見られました。川の機嫌次第なので、その時どんな風に見えるかは運次第。そこが面白いのかもしれません。ちなみにサケの遡上2020年第1号はつい先日、8/6に確認されたとのこと。

f:id:gonzalezkw:20200812224901j:plain

件の『邪神ちゃん 千歳編』にもここの水族館は登場する関係で、円形の水槽の脇にパネルが展示してありました。

 

f:id:gonzalezkw:20200812224914j:plain

鈴木愛奈さん

 

f:id:gonzalezkw:20200812225422j:plain

水族館の裏手、千歳川にはインディアン水車が設置されています。これはサケを捕獲する伝統的な仕掛けで、昨年は25万匹以上捕獲したとか。千歳川を渡る風がほんとうに気持ちよかったです。

f:id:gonzalezkw:20200812231742j:plain

エンドレス『鈴木愛奈のおいでよ千歳へ!』

帰りのバスまで時間があったので、隣接する道の駅を見て回りました。鈴木愛奈さんのPR動画が無限に流されています。『邪神ちゃん』のコラボフードもこの道の駅で買えるみたいです。

 

f:id:gonzalezkw:20200812232357j:plain

やっと来られたもりもと本店

再びバスに揺られ着いたのはもりもと本店。パンと洋菓子のお店で、道内のスーパーやショッピングセンターなどに出店しているローカルチェーンの本店です。最近知ったのですが、新千歳空港にも店舗があったんですね。今まで名前だけは知っているという状態でしたが、ようやく訪れることができました。「シャモニー」や「雪鶴」はじめ、おやつや翌日の朝食その他もろもろを買い込みます。

 

f:id:gonzalezkw:20200812234211j:plain

真っ白

もりもと本店での買い物を終え、荷物を置いている空港に一度戻ります。例によって疲れからか、1時間ほどラウンジでのんびりしてしまいました。天候が怪しくなってきており、窓の外は霧だがもやだかで視界がだいぶ悪くなっていますが、運航には特に支障は起きていないようです。

 

f:id:gonzalezkw:20200812234724j:plain

 

ホテルに向かいます。この日の宿泊地は新札幌で、空港からは快速エアポートで乗り換えなしで行けます。悩みましたが、Uシートに課金してしましました。

泊まるのは「ホテルエミシア札幌」。新札幌駅徒歩3分、シティホテルと呼ぶべきような立派な宿です。素泊まりながら、高層階確約シングル利用で1泊6000円とひじょうにリーズナブルなプランがあったのでそれを利用しました(ここからさらにGO TO トラベルキャンペーンが適用されればいくらか戻ってきます)。安くてうれしい反面、ここまでディスカウントしないと客が来ないのであろう現実がチラリと見えてしまい、少々複雑な気分になります。

 

 

f:id:gonzalezkw:20200813000750j:plain

ありがとうございました。

さて、また今日はここでは終わらず、荷物を置いて札幌市外へ足を延ばしました。

地下鉄東西線で西11丁目へ。昨年閉館した、思い出のニトリ文化ホールを見て、世の中の諸行無常を痛感しました。

 

f:id:gonzalezkw:20200813000054j:plain

 

徒歩で「中央区役所前」まで移動し、市電に乗り反時計回りで「西4丁目」を目指します。いわゆる「乗りつぶし」の一環です。札幌の市電は山手線や名城線と同じく環状運転をしていますが、自身はそのほとんどが未乗であったため、空白を埋めるべく大きく遠回りして2つお隣の電停に向かいます。

夜に札幌都心から郊外へ走る電車なので、乗り込むと車内はそこそこ混んでいてました。しばらく走ると「西線〇条」という電停名が続き、乗客がどんどん減ってゆきます。「西線」は表記上は「にしせん」ですが」、発音すると「にっせん」になるんですね。

都心部から最も離れたエリア、「東屯田通」電停の前後辺りでは、皆降りてしまいついに乗客は私だけになってしましました。開け放たれた窓から吹き込んでくる夜の札幌の空気が心地よかったです。その後電車は再び都心に向けて戻る格好になり、わずかながらの乗客を各電停で拾い、すすきのを通り抜けて「西11丁目」に到着しました。

 

f:id:gonzalezkw:20200813002958j:plain

地下鉄大通駅から南郷18丁目駅へ移動し、やってきたのは「みよしの南郷20丁目店」。「みよしの」は札幌のローカルチェーン店で、一度行ってみたいと前から思っていました。カレーと餃子という、なじみのない身からすると全くピンと来ない組み合わせの「みよしのセット」ですが、食べてみると意外なほどよく合います。新鮮味というよりは、まるでカツとカレーみたいに昔から馴染みのある組み合わせかのような謎の安心感さえ覚えます。餃子は薄皮でジューシー、カレーもしっかりとした味ながら後からピリッとくる辛さで、ひじょうに美味しくいただけました。また食べたい。

 

f:id:gonzalezkw:20200813004438j:plain

「みよしの」近くのセイコーマートで買い込んでホテルに戻ります。私にとってセコマの欠点として、テンションが上がって正常な判断ができなくなりつい買いすぎてしまう点が挙げられます。事実、この量を一晩で消費しきれるはずはなく、ほとんどはカバンに翌朝突っ込む羽目になり荷物になってしまうということを何度も繰り返しており、この晩も例外ではありません。学習能力ゼロなのは自分でもよく分かっているのですが、人間、やめられないものはやめられないのです(開き直り)

 

そうこうしているうちに時刻は0時を回りました。活動時間の長さ故か、疲労もかなりのものになっています。明日も早いです。この晩はぐっすり眠りました。

 

・・・

 

旅行記 2020 06 養老鉄道と樽見鉄道に乗ってみた

岐阜県にある大垣駅。「おくのほそ道」の終点としても知られる水都大垣の玄関です。この駅を発着する中小私鉄が2つあり、2020年6月13日にその両方に乗ってきました。大垣は西に向かう途上に何度も立ち寄ったことのある街ですが、そこから出る私鉄には乗ったことがありませんでした。行こうと思えばいつでも行ける距離だからこそ、案外機会のないものです。乗ったことがないから、乗ってみよう。単純な話です。

 

実際のところの真の目的は、期限の迫った名鉄株主優待乗車証の消費にありました。1枚につき1乗車、任意の駅まで行ける乗車証で、金券ショップなどでもバラ売りされています。訳あって2枚余っていたところにコロナ騒動が直撃し使うに使えず、間もなく紙切れになってしまう瀬戸際だったのです。

東三河に住んでいるので、消費するなら自ずと岐阜方面が有力候補になってきます(遠距離のらないともったいないという精神)。地図を睨みながら行先を検討しているうちに、そういえば大垣あたりの鉄道、結構手つかずで残っているなぁと思い至り、今回の日帰り旅に至った次第です。

 

1、桑名へ 

 

f:id:gonzalezkw:20200628130235j:plain

名鉄の株主乗車証。もう数日で紙切れになるところだった

 

早起きして6:13分発、名鉄の特急岐阜行きに豊橋から乗車。名鉄一宮に向かいます。特別車にしました。これは持論なのですが、名鉄は他の大手私鉄と比べ運賃は高い分、着席が保証された上級席の料金は安い気がします。なのである程度の距離を特急で移動するならば、特別車を使うべき、むしろ使わなきゃ損くらいに思っています。実際のところ休日6時台の特急を始発駅から乗るとなれば、特別料金のいらない一般車でも座席は選び放題座り放題なんですが、なんとなく特別車のほうが気分も上がりますし。どこまで乗っても特別料金は360円です。最近ではネット予約も可能になり、便利になりました。

 

f:id:gonzalezkw:20200628130226j:plain

特別車でのんびりと

 

名鉄一宮からは尾西線津島行きに乗り換え。乗りえ時間が1分しかなく気をもみましたが、対側ホームからの発車だったので難なく間に合いました。津島に向かいます。

豊橋から津島へ行くのならば、通常は名鉄本線須ケ口から分岐する津島線を使うんでしょうが、今回はあえて一宮を経由してみました。大した理由ではないんですが、一宮と津島を結ぶ路線など、三河地方に住んでる身からするとまず使う機会がないので、久々に乗ってみようと思っただけです。

とはいえそう目立った特徴があるわけではありません。住宅地を列車は進みます。部活か課外事業でもあるのか、高校生で車内は意外と混んでます。微睡みつつ揺られているといつの間にか津島に到着していました。

 

f:id:gonzalezkw:20200628133141j:plain

津島に到着

津島は三方面に線路が伸びるターミナル駅ですが、ホームは1面しかありません。ホーム上には人が多く、私の乗り換える弥冨行きにみんな乗るのかと思いきや、先にやってきた津島線の名古屋方面急行、吉良吉田行きに吸い込まれてゆきました。

名鉄では名古屋を終点とする列車はごく少数で、大半の列車は名古屋を跨いで運転されます。尾西線津島線のような支線からの列車も例外ではありません。多くの場合は本線を経由し西尾線に直通します。とはいえ乗客の行先はたいてい名古屋もしくは金山なので、直通先の地域との交流が頻繁にあるかといえば決してそうではありません。尾西線津島線の人は(吉良吉田ってどこだよ…)と、西尾線の人は(佐屋ってどこだよ…)と漠然と思いながら今日も名古屋直通列車に乗るのです。

 

f:id:gonzalezkw:20200628141107j:plain

弥冨駅。名鉄とJRが同じホームに

津島で乗り換えた弥冨行きは案の定ガラガラでした。そのまま終点へ。弥冨駅は名鉄がJRの駅の一部に乗り入れる格好になっており、これは豊橋駅も同じです。改札口もJRのものを使うので、経路について尋ねられたりするのかなと一瞬身構えましたが、改札は無人で拍子抜けしました。件の優待券は改札脇の回収ボックスに入れて、駅舎を出ました。

目指すのは三重県の桑名です。JRでも行けるのですが、すぐ近くにある近鉄弥富駅から近鉄線に乗ったほうが本数も多く便利そうなのでそちらを目指します。一宮あたりから降りつつあった雨がだんだん強くなってきており、すぐ近くだから…と油断して傘なしで向かってみたところあっという間に濡れネズミになってしまい、途中でたまらず折り畳み傘を開きました。

f:id:gonzalezkw:20200628142851j:plain

桑名のアーケード

近鉄の急行列車で木曽三川を渡り、桑名に到着しました。三重県の最も名古屋よりに位置する街で、降りてみるのは初めてです。駅近くにはマンションも多く、名古屋のベッドタウンとしての性格が強いのでしょう。

ここからは、養老鉄道に乗車します。ようやく登場しました、大垣に乗り入れる私鉄のうちの1つです。本数が意外と少なく毎時1本程度しかありません(この旅行に出る前までは、勝手に毎時2本くらいはあるんじゃないかと思っていた)。わりと待ち時間なく発車する便がありましたが、この先の行程を鑑みあまり先を急いでも仕方ないことが分かっていたので、桑名で小休止としました。

手持ちの現金がけっこう少なくなっていたので、まず銀行ATMへ。駅から5分程度。桑名の土地鑑はゼロですが、たぶんこの辺りが飲み屋とか多い雑多なエリアなんだろなと思われるエリアを通り抜けます。休日朝に雨のなか知らない街の誰もいない繁華街を歩くのはなんとも不思議な気分。

f:id:gonzalezkw:20200628144641j:plain

シンプルなモーニング

駅まで戻ったところでまだ時間がありました。朝の特急の中で菓子パンをかじってたとはいえ、少しお腹も空いたので駅前ビルの喫茶店に入りました。コーヒーにおまけでついてくるモーニング。派手さこそないけれど、ジャムとトーストだけのシンプルさが逆に安心感を醸します。店内にはそこそこ客がいるものの、ほとんど地元の常連と見受けられます。店内で流れているNHKラジオが9時の時報を告げ、続いて天気予報を伝えます。今日は全国的に梅雨空で、この先の行程でも晴れ間は期待できなさそう。

 

2、養老鉄道に乗ってみる

 

 

f:id:gonzalezkw:20200628220730j:plain

養老鉄道線の車両

 喫茶店での休憩を終え、きっぷを買って養老鉄道のホームにやってきました。JRと近鉄が同居する桑名駅の中に、窮屈そうに存在します。

これから乗車する養老鉄道は、ここ桑名から大垣を経由して揖斐まで至る路線で、三重と岐阜の県境をダイレクトに越える、唯一の鉄路です。かつては巨大私鉄・近鉄の一部でありましたが、収益が芳しくなく、2007年に別会社として分離されたという経緯があります。

どこかで見たような車両だな、と思いましたが、後から調べたところ、かつて東急電鉄で走っていた車両が使われているようです。東三河を走る豊橋鉄道もそうだけれど、けっこう東急のお古を使っている中小私鉄ってありますよね。3両編成のごく一部のみボックスシートになっている箇所があり、ガラガラだったこともありそこに収まりました。

f:id:gonzalezkw:20200628222039j:plain

大垣駅。右奥に停まっている揖斐行きに乗り換え

列車は揖斐川の右岸を北上します。東には木曽三川の作り出した海抜ゼロメートル地帯が広がるのに対し、西は養老山地の想像以上に急峻な山々が聳えています。ちょうど濃尾平野の西の縁とも言えるような地帯です。

沿線には多度大社や養老の滝といったそこそこ名の知れたスポットが点在しますが、そこに向かうような観光客は見られず、車内はぽつりぽつりと地元客が乗っている程度です。雨模様のせいか、自粛ムードのせいか、はたまたいつもこんな感じなのか…

養老を過ぎたあたりから大垣への流動があるのか、立ち客が出るほどではないものの段々と乗客が増えてきます。桑名を発って1時間強、列車は大垣に到着しました。

f:id:gonzalezkw:20200628224350j:plain

FOR IBI

 

養老鉄道大垣駅頭端式ホームになっており、桑名方面も揖斐方面も同じ方向に発車します。乗ってきた列車はここ大垣が終点なので、乗り換えが必要です。私のような全線乗ってみたいオタクからしたら、桑名→大垣→揖斐とスイッチバックして直通してくれる列車があると嬉しいのですが、そんな需要はほぼないのでしょう。必ず乗り換えを要します。実際、桑名発大垣行きから吐き出された人波は例外なく改札口に向かい、揖斐行きに足を向けるのは私一人でした。接続も考慮されていないのか、発車まで20分ほどの待ち時間があります。

f:id:gonzalezkw:20200628225414j:plain

桑名から揖斐までのきっぷ

今回は普通に乗車券を購入しています。フリーきっぷもあったけれど元を取るほどは乗らないはずなので。桑名から揖斐まで50km強、950円。

大垣を発車した列車は、室駅付近で桑名方面への線路と別れ、再び北を目指します。JR東海道本線東海環状自動車道をくぐり抜けて、神戸町・池田町を走ります。田畑と民家が点在する、典型的な郊外の様相です。乗客は1車両に10人いるかいないか程度。

f:id:gonzalezkw:20200628225901j:plain

揖斐駅に到着

大垣を出て20分と少し、到着した終点の揖斐駅は、こう言っては失礼ですが予想外に立派な駅でした。ちゃんと駅員もおり、改札を行っています。

f:id:gonzalezkw:20200628231208j:plain

雨に濡れる揖斐駅

依然として雨がしとしとと降っています。揖斐駅の外に出てみました。周囲にはこれと言って特に何もありません。ここ揖斐川町の中心部は川を渡ってさらに北に2kmほど行った辺りにあり、どうも中途半端な場所で線路が途切れてしまっているという印象を受けます。

それにしても、養老鉄道として分離される十数年前は、ここまで大阪に拠点を置く近鉄の手が伸びていたという事実に改めて驚かされます。難波や阿倍野橋からここまで、1つの私鉄だけで来れてしまったわけです。近鉄グループ傘下の三重交通グループのさらに傘下の名阪近鉄旅行が駅前に店舗を構えているのが、近鉄時代の名残でしょうか。

f:id:gonzalezkw:20200628232614j:plain

線路はここで途切れる

ここで私はミスをしました。予定ではこの後樽見鉄道に乗車することになっておりました。このまま大垣まで引き返すのも芸がないなと考え、ここ揖斐駅から東方に位置する大野町に向かうバスに乗り、さらに大野町でバスを乗り継いでモレラ岐阜に出るプランを考えていました。

大野町に向かうバスは駅前から列車到着の3分後に発車するはずなのですが、駅前にやってくるのは地元客の送迎のための乗用車ばかりで、バスの影も形も見えません。もしや!と思って貼ってあったバスの時刻表を見たら、そこには「平日のみ運行」の文字が。曜日を取り違えるという、実にバカバカしい単純なミスに、苦笑いするしかありませんでした。

さてどうしたものかと慌てて考えました。タクシーで大野町まで出れば予定するルートに復帰できるかもしれませんが、痛い出費になりそうです。徒歩も一瞬頭によぎりましたが、歩くにはちょっと距離があり、さらにこの雨の中でとなると考えるだけでも憂鬱。

f:id:gonzalezkw:20200628234203j:plain

無念のとんぼ返り

 

結局、芸がないのは承知で、乗ってきた列車で大垣に引き返すことにしました。1~2時間に1本しかない大垣行きが発車する前にミスに気づけたことは、不幸中の幸いでした。元来た道を引き返します。

 

3、樽見鉄道に乗ってみる

 

大垣駅に戻る途上で樽見鉄道の時刻を調べると、こちらも1~2時間に1本しかない列車の発車時刻が迫っていることが分かりました。ちょうど養老鉄道線が大垣に到着して10分弱で樽見鉄道が発車するようです。ちょうど昼時であったので大垣で何か腹ごしらえを…と思っていましたが、お預けになりそうです。

樽見鉄道はJR大垣駅のホームの片隅から発車します。養老鉄道からの乗り換えは理論上十分に可能ですが、かといって余裕はありません。JRの改札に向かう。駅員に樽見鉄道に乗る旨を申告しJRの改札をくぐって、構内の片隅へ。樽見鉄道の窓口がそこにあるので、フリーきっぷを購入、そして乗車。これを最速でこなす必要があり、発車の1分ほど前にようやく乗り込めたというところでしょうか。ちょっとスリルがありました。

f:id:gonzalezkw:20200629000202j:plain

樽見鉄道。景色が後ろに流れてゆく。

例によって地元客がまばらに乗っている感じの車内でしたが、何組かこれから買い物に行くような様子の中高生が見受けられました。沿線に「モレラ岐阜」なる大型の商業施設があり、それに隣接して樽見鉄道モレラ岐阜駅があります。おそらくそこまで乗るのでしょう。

車両のいちばん後方に陣取りました。こういう時鉄道オタク的には最前をとって前面からのパノラマを楽しむのが王道なんでしょうが、最前はなんだか忙しない印象があり、のんびりと乗りたいときは後方がいい気がします。まぁ好みの問題でしょうが。

しばらくJR東海道本線に沿って東に進んでいた線路は揖斐川を渡ったあたりで北に転進し、樽見を目指します。

北方真桑駅の手前で、今は使われていないような築堤が車窓を過りました。2005年に廃止された、名鉄揖斐線の跡です。名鉄もかつては岐阜県美濃地方西部にまで手を広げており、その路線網は近鉄に次いで壮大なものでしたが、いまではだいぶスリムになりました。それにしても、名鉄揖斐線(とそれに接続する各線)の残っていた十数年前までの西濃地方の鉄道網は、かなり賑やかなものだったんじゃないでしょうか。

f:id:gonzalezkw:20200629004057j:plain

織部古田織部織部織部焼織部。(帰途に撮影)

本巣は路線中間の拠点となる駅で、3分ほど停車し運転士の交代が行われました。交代後の運転士はものすごく指差喚呼をハキハキと行う人で、車両後部までその声がはっきりと聞こえます。本巣にはかつてセメント工場があり、樽見鉄道線で貨物輸送を行っていました。この貨物が樽見鉄道としては重要な収入源でしたが、2006年に廃止されてしまい、財政的に苦しい状態にあるようです。

「道の駅織部の里もとす」に隣接する織部駅。ここを境に、樽見鉄道線はまるで人が変わったかのように一変します。ここまでは濃尾平野北端の、平坦な田園地帯を進んできましたが、ここから先は揖斐川の支流、根尾川の渓谷に挑みます。

f:id:gonzalezkw:20200629005723j:plain

水を湛える根尾川(帰途に撮影)

降り続く雨により、根尾川の水量はかなり多くなっているように見えますが、その脇を列車は何事もないかのように軽快に進みます。

f:id:gonzalezkw:20200629010354j:plain

初見では読めない

鍋原と書いて「なべら」はちょっとさすがに想像もつきません。長く呼ばれている間に「は」が脱落したのでしょうか。

f:id:gonzalezkw:20200629010855j:plain

鉄橋とトンネルを多用する

 

神海(旧名:美濃神海)までは、かつて国鉄樽見線として運航していたものを引き継いだ路線です。一方、神海から先は私鉄として再出発した後、1989年になってから開通した比較的新しい区間です。近年になっての建設ということで、鉄橋やトンネルを多用して渓谷をどんどん遡ってゆく、高規格な路線になっています。

f:id:gonzalezkw:20200629011757j:plain

強そう

根尾谷断層のそばを抜けて、列車は終点の樽見駅に到着しました。大垣から1時間強。このやたら存在感を放つ胸像は、樽見線をこの地に誘致するために尽力した宮脇留之助氏のものということです。

さて、ひじょうに悩ましいのが、どの列車で帰るかです。今乗ってきたこの列車は、10分ほどで折り返してしまいます。その次は1時間半以上先。近くの有名なスポットとしては、徒歩20分ほどの場所に有名な淡墨桜がありますが、今の時期は葉桜を通り越して完全に葉っぱでしょう。晴れていたら渓谷ののどかな街で川でも見ながら時間を潰すのも悪くないでしょうが、今日はあいにくの天気。飲食店にでも入れたらいいんですけど、少なくとも駅前には何もなく、歩き回ったところでそういった店がある保証はありません。なので、逡巡した末に、10分後の列車で帰ることにしました。正直、謎の敗北感はあります。本当に鉄道に乗りに来ただけ、THEオタクムーブって感じで本当は避けたい行動なんですけど、まぁやむを得ないですね。

ちなみに本来ならば、列車と接続して無料のバスが出て、うすずみ温泉なる温泉施設に連れて行ってくれます。列車と温泉がセットになったフリーきっぷもあり、樽見についた後の動きはこの温泉に行ってみるのがベターだと思います。しかしこのときはまだ温泉施設の営業自粛が続いており、それは叶いませんでした。

f:id:gonzalezkw:20200629014220j:plain

終点

樽見で線路は途切れますが、国鉄時代のもともとの計画では金沢までつなげる予定だったようです。もし金沢まで開通していたら、東海地方と北陸地方を結ぶ重要な路線になっていたかもしれません。

f:id:gonzalezkw:20200629014552j:plain

折り返す

若干の後ろ髪ひかれる思いを抱きながらも、樽見を後にします。晴れてて温泉もやっているときにまた来たいね。

 

4、帰る

帰途に就きます。まだお昼を回って少し、十分に明るい時間なのですが、早朝から動いているので少々疲れました。目的は一応達成したわけですし、早めに帰りましょう。

 

f:id:gonzalezkw:20200629021410j:plain

大垣駅から出るのに必要なアイテム

 


大垣駅まで戻りました。樽見鉄道を降車する際に、通常のきっぷは回収されます(私が使っていたフリーきっぷはもちろん例外です)。しかし先述のとおり、樽見鉄道の乗り場はJR改札の中に存在するので、このままではきっぷを所持していないことになり、JRの改札から出ることができません。なので降りた客全員に、樽見鉄道社員から降車証明書が配られます。この券ををJRの自動改札に投入すれば、大垣駅から出ることができます。

f:id:gonzalezkw:20200629021919j:plain

視界不良

大垣からJR東海道本線に乗ってやってきたのは岐阜駅。

何とかと何とかは高いところが好きとはよく言ったものですが、旅行中にその街のことをよく知りたいと思ったら、高いところから見下ろすのがベストです。岐阜駅にほど近い岐阜シティ・タワー43では、43階から街を見渡せます。

なんといってもありがたいことに展望フロアが無料なので、もしも岐阜駅で時間ができたら、とりあえず登っておけば間違いないです。今日はこんな天気なので見える景色はご覧のあり様でしたが。

f:id:gonzalezkw:20200629023354j:plain

みんな大好き展望席

忘れてはいけません。今回の旅行の真の目的は、紙くず寸前の名鉄株主優待乗車証を消費すること。なのでわざわざ岐阜駅で降りて、名鉄岐阜駅まで歩いてきました。岐阜から豊橋に向かう名鉄の特急のうち、一部は先頭に展望席が設けられており、これに乗れば優雅に流れる車窓を楽しみながら豊橋まで帰れるという寸法です。展望席は特別車の一部という扱いなので、ここを指定した360円の特別車両券さえあれば乗ることができます。ちなみに個人的にオススメする席は、展望席としては最後尾に位置する5A~Dです。展望に配慮してシートの背もたれが低い前4列とは違い、しっかり頭の後ろまでシートの背もたれがあるので落ち着いて乗っていられるような気がしますね。

走行中、ところどころで雨が強く降る箇所がありました。雨だと展望自体はあまり望めなくなりますが、大雨が打ち付けるなか疾走する展望車は迫力があり、また違った面白さを感じます。

 

大雨に降られながらも、列車は何事もなかったかのように無事豊橋に到着しました。あとは本当に帰るだけです。さすがに疲れがどっと出ました。

 

f:id:gonzalezkw:20200630224549p:plain

今回の行程(地理院地図Vectorをもとに作成)

鉄道の旅、ローカル線の旅は久々で、ホント楽しかったです。今回の旅行自体は、きっぷ消費のための消化試合的な側面が強く、正直自分でも大して期待していなかったところもあったといえばあったんですが、やっぱり行っちゃえば楽しいもんです。

それと同時に、結構よく知っているつもりのこの東海地方でさえもまだまだ見るべきところは無限にあることを実感しました。まだ旅は終わりそうにありません。

 

最後に、あらゆる人が、大手を振って気兼ねなく旅行できる日がまた訪れることを願って。ありがとうございました。

 

謹賀新年

f:id:gonzalezkw:20200107203946j:plain

AZARASHI

あけましておめでとうございます。

日頃、弊ブログをご覧いただいている皆様に、改めまして篤く御礼申し上げます。

 

PCを新しくしました。元をとるためぼちぼちブログを更新したいと思います。目標は昨年の更新頻度を上回ることです。よろしくお願いします。

 

東北の記事が途中で終わってますね。  つづく(大嘘)

陸前高田が旅のピークであったためか、明らかに執筆意欲を失っていますね。実際あのあとほとんど帰るだけだったし。今となってはほとんど覚えていないので、無理に完結させることはしませんが、もし当時更新を楽しみにしていた方がいたら、申し訳なかったですね。

今後、旅行記のような記事を投稿するかもしれませんが、同じ轍を踏まないよう、何とか完結だけはさせる、最悪飽きてもなんかとかして締めるようにしたいと思った次第です。

 

旅行記 2015 10 「東北ジグザグ紀行」 ⑨陸前高田を歩く

f:id:gonzalezkw:20160223234511j:plain

奇跡の一本松付近でひときわ目を引くのが、この斜張橋だ。「希望のかけ橋」と名づけられたこの橋は、人や自動車、列車が通るためのものではない。陸前高田の町の復興に必要な土砂を山から運搬するためのベルトコンベアの一部なのだ。気仙川を跨ぐ部分はこのように立派な造りをしている。

f:id:gonzalezkw:20160223234453j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223234557j:plain

橋の下を、一本松に向かう通路が通っている。見上げると、なかなかの迫力だ。

f:id:gonzalezkw:20160223235056j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223235157j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223235211j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223235225j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223235238j:plain

f:id:gonzalezkw:20160223235254j:plain

「希望のかけ橋」を越えたベルトコンベアは、旧陸前高田市街の方面へと、長く伸びていた。ただなんとなく陸前高田までやってきた私は、目を見張った。正直な話、今回の旅行でもっとも印象に残る光景だった。なので撮った写真をペタペタといっぱい貼らせてもらった。言ってしまえばただ土砂を運ぶだけの構造物なのだが、これが町の復興を担っている。地元の人々が斜張橋に「希望」を冠したのも、頷ける話だ。

ところでこのベルトコンベア、どうも話に聞くと土砂の運搬が終われば撤去されるため、もしかしたら今はもうないかもしれない。

f:id:gonzalezkw:20160224000639j:plain

f:id:gonzalezkw:20160224000651j:plain

f:id:gonzalezkw:20160224000701j:plain

f:id:gonzalezkw:20160224000711j:plain

気仙沼方面に戻るBRTまでまだ時間があったので、陸前高田駅(BRT)まで歩くことにした。歩き始めて目に付くのが、土砂の山だ。ベルトコンベアで運んだものを、嵩上げ工事に使うのだろうか。

私の使っていたインターネット上の地図サイトではこの周囲の更新があまりされておらず、地図上では陸前高田駅に近い市街地を歩いていることになっていた。しかし、周辺はひたすらに更地である。駅も線路も市街地も見当たらない。町がまるごと消えてしまっているという現実が、にわかには信じられなかった。

下調べが甘かったからか、私はBRTが発着するのは旧大船渡線陸前高田駅の場所だと思っていたのだが、そこは更地だ。ここに発着するのはちょっとあり得ない。慌てて調べ直すと、現在地よりだいぶ北の、丘の上から発着することがわかったので、そちらに向けて歩き出した。

f:id:gonzalezkw:20160224002303j:plain

f:id:gonzalezkw:20160224002313j:plain

丘を登る坂道が案外急だったこともあり、奇跡の一本松駅から歩いて50分くらいかけてBRTの陸前高田駅に到着した。旧来の陸前高田駅とは、全く異なる場所だ。付近にはプレハブ造りの市役所やコンビニもあり、ここが現在の町の中心なのだろう。

陸前高田駅が見つからないときにはかなり焦ったが、なんとか予定通りのBRTに乗ることができた。気仙沼に戻る。

 

(つづく)