「スクールアイドルミュージカル」がめちゃめちゃ良かった

あけましておめでとうございます。

先日、「スクールアイドルミュージカル」を観てきました。率直に申し上げてひじょうに素晴らしい公演であり、いくつかのシーンを頭の中で反芻しては余韻に浸る日々です。

しかし残酷なことに記憶は薄れてゆくもので、少しでも抗うべくここに筆を執りました。と同時に、この物語を少しでも多くの人に知っていただけたら嬉しく思います。

 

1 はじめに

ラブライブ!シリーズの新たな新たな展開として、「スクールアイドルミュージカル」の上演が発表されたのは、2022年8月のことでした。同年12月の東京公演と2023年1月の大阪公演。計11日17公演行われます。

 

www.lovelive-anime.jp

 

これまでラブライブ!というコンテンツでは、複数のシリーズに渡り多様なキャラクターを輩出してきましたが、「スクールアイドルミュージカル」はそれまでのシリーズとは一線を画す、完全新作として作られます。登場人物はもちろん、劇中の設定も、演じるキャスト陣も、ラブライブ!としては初の顔ぶれとなります。

 

発表を聞いたとき、大きな期待と若干の不安を感じたのを覚えています。

ラブライブ!シリーズのアニメ内では、劇中挿入歌として登場人物が歌唱を通して状況や心情を表現することがままあり、これはまさしくミュージカルの表現そのものです。現実世界で舞台上で表現するとしたら、題材としてミュージカルとの相性が抜群にいいことは想像に難くありませんでした。

一方で、完全新作というのはどうなんだろう?とも当時は思いました。ラブライブ!シリーズのライブが素晴らしいと感じるのは、キャラクターに愛着を覚える→キャストが本気でステージ上で再現する→オタクが感動する、というプロセスを踏むからという部分が大きく(もちろん例外がいくらでもあることは承知しておりますが)、アニメ等の展開もなしに当日いきなり新しい登場人物に触れて、感情移入できるだろうか、とも思ったものです。

 

2 チケットをとる

濃淡の差こそあれこれまでにラブライブ!の全てのシリーズに触れてきた人間として、当初から「スクールアイドルミュージカル」は1回は観てみようと思っていました。

仕事の予定が若干の怪しかったのと、全公演すぐ満席ということはないだろうという慢心から最速先行は見送り、11月の末ころ一般で滑り込み申し込みました。東京より近いのと、折角行くなら作中で舞台とされている関西で見たほうが面白そうという理由で大阪公演です。

 

 

 

3 大阪へ

1/25の大阪公演としては初日となる回に行くことにしました。

この日は天候が結構ヤバく、折しも前日から数年に一度の寒波が襲来していました。前夜の京都では雪で転轍機が動かず、満員電車に数時間閉じ込められる事態も起こっていた、まさにそんな時です。平日だとめちゃくちゃ安いという理由でかなり前から押さえていた高速バスも、あえなく運休になってしまいました。

あえて雪で大変な状況の関西に突っ込んでゆくのが怖く、実はチケットを握りながらも行くべきかどうか当日朝まで逡巡していました。結局のところ、雪のピークは過ぎていそうなこと、新幹線や近鉄は遅れながらも動き続けていること、そして公式からの中止やチケット払い戻しのアナウンスがないこと(我ながら現金だなぁ)を確認して、出発しました。

 

 

 

今思えば、ここでもう少し状況が悪ければ、最悪1度も足を運ばないまま千秋楽を迎えていたかもしれず、ギリギリながら辿り着けた幸運に感謝です。

 

4 スクールアイドルミュージカル

前置きが長くなりましたが、ここからはミュージカルそのものについて振り返ります。なお、現在のところ公式の発表はありませんが、場合によっては再演等の可能性があることも否めないため、物語の核心には触れず、公式サイト等で明かさてている範囲程度の記述としています。

 

youtu.be

 

まず脚本ですが、話が単純に面白いです。

公式サイト等でも散々語られているので今更ここに記すまでもないでしょうが、本作は2つの学校を舞台としています。芸能コースを擁し学校のブランド化を進める大阪・滝桜女学院と、伝統を重んじる進学校の神戸・椿咲花女子高校。もともと生徒どうしの関わりはなかった対照的な2校ですが、ある出来事をきっかけに出会い、そして ――。というストーリーです。メインの登場人物として、各学校生徒5名ずつと、各学校の理事長(どちらも生徒のうち1人の母親でもある)を加えた12名で物語は進みます。

意識をしているのかどうかは定かでありませんが、いい意味でまるで1クールのアニメを見ているかのような、スピード感と濃密さがありました。休憩やカーテンコールを除いた上演時間がおおよそ2時間弱でしたが、駆け足になりすぎずかといって中だるみもせず、ベストな塩梅だったと思います。

そして、私も初鑑賞の時そう思いましたし、SNS上でも散々言われていることですが、なんといってもしっかり「ラブライブ!」でした。先述の通り本作は完全オリジナルなので、登場人物も学校もグループはじめ、既存シリーズの事物は言葉上ですらほぼ登場せず、一線を画した世界観を表現しています。にもかかわらず、例えば好きなことに打ち込む熱さだったりとか、仲間と高めあう楽しさだったりとか、あるいは現実に直面した際の葛藤であるとか、そういった既存シリーズでも随所に見られたラブライブ!らしいエッセンスを随所に感じられるものでした。

タイトルで「スクールアイドルミュージカル」と銘打っているとおり、本作は「スクールアイドル」という存在そのものに、鮮烈に焦点を当てています。その姿は、本作で初めてラブライブ!シリーズに触れる人にはこれ以上ない導入であったでしょうし、と同時にこれまでにラブライブ!に触れてきてきた立場から見ても、ひじょうに感慨深く、こみ上げるものがありました。あぁ、スクールアイドルって素晴らしいな… 音ノ木坂から結ヶ丘まで、どのシリーズでもいいのでこれまでのシリーズに1度でも心を動かされた経験のあるような人でしたら、何かしら感じるものはあるでしょう。

 

物語はまず、いきなり滝桜女学院芸能コースの面々によるライブシーンから始まります。まずこの時点で高いレベルで仕上がっており、はぇ~っと見とれてしまうわけですが、そこから間髪入れず理事長が登場し、圧倒的な存在感をもって、ライブに見とれていた我々を否が応でもミュージカルの世界に誘います。

この「ライブ」から「ミュージカル」に転換する瞬間は、初見で度肝を抜かれました。なんせライブは今まである程度の回数を参加していてある種の慣れがあっても、ミュージカルとなると片手で足りるほどの鑑賞経験しかないオタクですので、いきなり遠い世界に連れていかれたかのような衝撃を抱いたのを覚えています。

 

先述のとおり2つの学校が舞台になっているので、必然的に場面は両校を行き来しますが、ここの差異を表現する演出は驚きでしたね。ミュージカルというか舞台演劇ってこういうことよくあるんですか?終盤のセットの使い方に関してはほんとに凄まじかったです。詳細を伏せてしまうのがもどかしいですが、分かりやすく例えるなら、「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! ~KU-RU-KU-RU Rock ‘n’ Roll TOUR~ <WINDY STAGE>」における東京ドームの幅100mくらいありそうなクソデカモニターくんと同じくらい、陰の立役者として八面六臂の大活躍をしていました(分かりやすいか?)。

 

そして、劇中の楽曲がホントによかったです。先述の、冒頭で滝桜の面々が披露した『きらりひらり舞う桜』はすごくキャッチ―な楽曲で、気づいたら口ずさんでいるような魅力がありますし、(厳密には劇中の楽曲ではないですが)表題曲というべき『未完成ドリーム』も新たな世界の始まりを予感させるような爽やかな楽曲で、初鑑賞以来ほぼ毎日無限に聴いています。そしてなんといっても『君とみる夢』『ゆめの羅針盤(コンパス)』の2曲がめちゃくちゃに大好きで…… どちらも劇中のかなり重要なパートで披露される楽曲なんですが、ストーリーと良さと楽曲の良さの相乗効果でとてつもない強さを発揮しており、これもまたラブライブ!っぽくて本当に良かったです。『未完成ドリーム』以外の楽曲はもう聴くことできないのマジですか?人類にとって大きな損失ですよ?とか思っていたら5月にアルバムを発売していただけるとのことで、感謝です。

 

もちろん演者のみなさんも輝いていましたね。大変申し訳ないことに、演者の皆さんのことを余り知らない状態での初鑑賞と相成ったわけですが、それぞれが第一線で活躍される方で、演技も歌唱もダンスも素晴らしかったです。とくに本作は完全オリジナルであるので、私たち観客は登場人物ののことをほとんど知らない状態での鑑賞になったわけですが、それぞれがどういうキャラクターであるか、あたかも昔から知っていたかの如くスッと頭に入ってきたのは、脚本と演者の皆さんの演技の功績だと思いました。

アンサンブルのキャストの方々も、両校生徒をはじめ多彩な役をこなさなければならない中、物語の進行に大きな役割を務めており、とても良かったです。そして両校の理事長。理事長なんてチョイ役だろうと当初は思っていたことを恥じました。歌唱力はじめ存在感が半端なかったですし、彼女らのストーリーもしっかり描かれており、なくてはならない存在でした。後から知ったのですが両理事長を演じるキャストはぞれぞれレ・ミゼラブルや宝塚で活躍された方で、そりゃあの存在感も納得だわ…… Twittwrで「キョウマド(=両理事長のカップリング)マジ尊い…」とか書かれているのを見たときはネタかと思っていましたが、強ち間違っていないので恐れ入りました。



第2幕まで終わった後はカーテンコールのスペシャルステージがあります。いわばライブパートであり、劇中楽曲の披露が行われます。観客はこのパートのみペンライトの使用が許され、私もせっかく持って行ったので点灯して振っていました。それまでミュージカルとして見ていた演者やステージに、ペンライトを向けているのはなんだか不思議な感覚も覚えましたが、あの多幸感は素晴らしく、代えがたい経験でした。

 

あとは個人的なアレですが、椿咲花の椿ルリカと皇ユズハの関係がめちゃめちゃ好きなんですよね…… 2人は幼馴染でいつも一緒に何かやってきた仲なんですが、さすがにアイドルまではどうかな…とそこで初めて方向性の相違が明確になり…そして――。、という感じでハラハラさせられながらも目が離せず。ラブライブ!シリーズにおいて幼馴染どうしの描写は結構王道なんですが、王道が王道たる所以を痛感しました。劇中で、ある曲がユズハの作詞であることが明かされるのですが、彼女の立場から歌詞を紐解くと…もう、ホントに…

終演後、気づいたら足が物販会場に向っており、いつの間にか手にはルリカとユズハのアクリルスタンドが握られていました。(偶然か狙ったのかわからないですが、この2人のアクリルスタンド、並べると手を繋いでいるような配置になるのがマジで……)

 

 

 

あと物販は終演後がいちばん混雑していました。みんな自然と向ってしまったのでしょうか。満足度の高さが伺えます。



5 終演、そして

そんなこんなで満足感を胸に抱きつつ、足早に梅芸を出て中津から御堂筋線で新大阪へ。雪で新幹線が遅れており、できるだけ早い便にと来た新幹線に飛び乗りました。

そんな中でふと開いたLINE。オタク仲間から聞かれたミュージカルどうだった?の質問に返した「大阪いくぞ」――。

 

 

 

というわけで3日後の1/28に、2回目を鑑賞しました。正直ここまでハマるとは、まさか水曜に大阪行ったばかりで土曜に行くことになるとは、思ってもいませんでした。

本当は水曜日終演後に、いくらかばかりお得に鑑賞できるリピータ―チケットを買えたら良かったのですが、その時点では週末の再来阪は決めかねていたので、素直に一般販売でチケットを入手。件のオタク仲間も道連れです。

 

物販がの売り切れが多かったことと、劇中に登場する食べ物が「551の豚饅」から「ケンミンの焼きビーフン」に変わっていたくらいしか、当然ですが水曜日の鑑賞時と差異はなかったので、詳細の描写は割愛しますが、正直、2回目の方がヤバかったです。初回鑑賞時は終盤の展開にマジで!??と呆気にとられていた部分も大きかったのですが、2回目となると全て分かった上で観るわけで、こんなんさあッッ 絶対アレじゃん…… 初回は眼がウルっとするくらいでしたが、2回目は滂沱の如くでしたね…… 道連れにしたオタクも満足そうにしていたので良かったです。

 

6 おわりに

さて、ここまでお読みいただきありがとうございました。鑑賞した方には当時を思い出すきっかけとして、未鑑賞の方には、どんなものか知ってもらう機会として、読んでいただけたら幸いです。

オタク仲間道連れにして2回目の鑑賞をしたのもそうですし、今回の記事を執筆したのも、「もったいない」という思いからでした。

無事1/29に大千穐楽を迎えたスクールアイドルミュージカル。今後の展開として発表されているのは、5月のアルバム発売くらいです。

本来ミュージカルや舞台というのはそういう刹那的なものなのかもしれませんし、多方面で活躍する各関係者をもう一度集めて…というのが現実感に乏しいことは承知しています。ただ、どうしてもこのラブライブ!史に金字塔を打ち立てたと言っても過言でない作品をこれで終わりというのは、22年度の冬にたまたま東京と大阪の劇場へ足を運ぶことができた人間だけの思い出にしておくのはあまりにもったいない、という想いがあります。

 

 

 

ただ、まだ望みはあります。上記のとおり、私たちの声次第で、叶えられる物語があるかもしれません。今回筆を執ったのは、そういった側面もあります。

5月発売のアルバムも、要望の声に応える形で発売が決まったと聞きます。

「次」を実現するのは容易いことではないかもしれませんが、信じて待ちたいと思います。

 

君とどこまで行けるのかなんて まだ分からない でもね 永遠って言ってみたくて――

(『未完成ドリーム』より)